びわ湖ホール プロデュースオペラ
ニュルンベルクのマイスタージンガー
2023年3月2日13:00 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
指揮:沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)
ステージング:粟國 淳
管弦楽:京都市交響楽団(コンサートマスター:石田泰尚)
ハンス・ザックス:青山 貴
ファイト・ポークナー:妻屋秀和
クンツ・フォーゲルゲザング:村上公太
コンラート・ナハティガル:近藤 圭
ジクストゥス・ベックメッサー:黒田 博
フリッツ・コートナー:大西宇宙
バルタザール・ツォルン:チャールズ・キム
ウルリヒ・アイスリンガー:チン・ソンウォン
アウグスティン・モーザー:高橋 淳
ヘルマン・オルテル:友清 崇
ハンス・シュヴァルツ:松森 治※
ハンス・フォルツ:斉木健詞
ヴァルター・フォン・シュトルツィング:福井 敬
ダフィト:清水徹太郎※
エファ:森谷真理
マグダレーネ:八木寿子
夜警:平野 和
※…びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル
指揮の沼尻が今回のマイスタージンガー上演で、2010年「トリスタンとイゾルデ」から開始したワーグナー主要10作品上演を達成。
併せて3月末で芸術監督任期満了となる記念すべき公演。16年間務めたそうで、びわ湖ホール桂冠芸術監督の称号を贈られるそうだ。
そのためか今日の配布プログラムは、1998年の開館以来の、沼尻を含めたびわ湖ホールプロデュースオペラの全ての記録が掲載された分厚いもの。
ホールとしても、全てのジャンルのクラシックコンサートを実施しながらの毎年のオペラ制作は、いかに素晴らしい業績であるかはいうまでもない。
今日の上演はセミステージ形式で、ステージングは粟国淳。
オーケストラの配置は通常のステージ上で、その前のオーケストラピットがステージよりやや高めに設定されており、アクティングエリアとなっている。
オーケストラの後ろが合唱団席となっている。その背景には大きなスクリーンが、また、ステージ上には7枚の垂れ幕がシンメトリーで天井から吊るされている。これらに、物語の舞台となっているニュルンベルクの街や、教会の内外、そして楽譜などが投影され、鑑賞の手引きの役割を担っている。
進行、演技、人の動きは曖昧なところが一切無く、とてもわかりやすい。
今日の沼尻は素晴らしかった。最後まで、見事に全体をコントロールし、万全の音楽を聴かせてくれた。
歌手は日本を代表する歌手ばかりで聞き応えがあり、制約のあるセミステージ形式でありながらも、映像と最小限の演技で、この長大なドラマを見事に再創造し、沼尻びわ湖芸術監督の締めくくりに相応しい上演だった。
歌手と合唱は、全体的に滅多に観ることのできない若々しい(を感じさせる?)布陣。役柄によっては年上過ぎたり年下過ぎたり、と思わせる歌手もいたが、指揮者も含め、オーケストラ、歌手、合唱、演技全て皆エネルギッシュで、実に気持ちのいいマイスタージンガーだった。
ハンス・ザックスの青山、ポークナーの妻屋、ベックメッサーの黒田、ヴァルターの福井、コートナーの大西、ダフィットの清水と重要どころの男性陣は皆立派。また、ガードマン姿で懐中電灯を持った夜警、平野が存在感充分。女性陣はやや地味な存在となってしまったが、エファの森谷、マグダレーネの八木ともに好演。
ここまで役者が揃うと、スーツ姿の小生ずるそうな、しかし憎めないベックメッサーや、ノーネクタイでスーツ姿のヴァルター、タキシード姿の歌合戦審査員など全く気にならない。
今日の席は1階半ばのやや上手寄り。オーケストラ、歌手、合唱がとてもいいバランスで聴こえてきて、申し分なかった。オーケストラの京都市交響楽団は極めて上質の演奏。
セミステージ形式ゆえの利点を活かした制作で、オール・ジャパンとして現在聴きうる最高のワーグナーだったのではないか。開館以来のびわ湖ホール自主制作の、長年の蓄積がこの公演に集約されていたような気がする。
この2日前に、札幌文化芸術劇場自主制作の「フィガロの結婚」を鑑賞したばかりだが、同劇場も25年後には、このような素晴らしい公演が実現できることを祈っている。
来年度からは、コロナ禍以前の舞台上演が復活するようで、新芸術監督の阪哲朗がどのような活躍をするか、大いに楽しみだ。
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