札幌交響楽団 第651回定期演奏会
2023年3月 5日13:00 札幌コンサートホール Kitara 大ホール
指揮/尾高 忠明
ヴァイオリン/金川 真弓
管弦楽/札幌交響楽団
エルガー:序曲「南国にて」
プロコフィエフ :ヴァイオリン協奏曲第1番
ラフマニノフ:交響的舞曲
エルガーは、たくましさを感じさせるスケールの大きな演奏。作品は、北国にはない南国の様々な気候と風景を、多彩な色あいのオーケストレーションで見事に表現したもの。よくある南国への憧れは感じさせない。
重厚な響きの中にも、繊細な様々な風景を想起させる描写も美しく、特に牧歌的な情景を表現したヴィオラのソロは秀逸。全体的にすっきりとした、いい表情の演奏だった。
今日の席は1階12列下手寄りで、ヴァイオリン、管楽器はもちろんのこと、チェロ、ヴィオラ、コントラバスの中低音域楽器がクリアに、しかしバランス良くまとまって聴こえてきたのには驚いた。尾高の指揮で札響を聴くのは昨年の2月以来。やはりこのホールで聴く尾高・札響は、長年聴き慣れた、豊穣で充実した音がして、とてもいい。
プロコフィエフを弾いた金川が素敵だった。第1番は、プロコフィエフが楽壇にデビューしたての20代半ばの作品で、まだ情緒的な香りを強く感じさせる作風だ。金川のソロは、この時期のプロコフィエフが持っていた、後の作風からは信じられない初々しい感性を、見事に表現した演奏。しなやかな、柔らかい表情で、音色も優しく、これほど音楽的に演奏されたこの作品を聴いたのは初めてだ。もちろん、プロコフィエフらしい諧謔的な表情もあったが、全体的に上品な作曲家像を見せてくれた。オーケストラはソロと一体になった美しい表情を聴かせ、申し分なかった。
ソリストアンコールにプロコフィエフの無伴奏ヴァイオリンソナタより第2楽章。
ラフマニノフは、当日配布プログラムによると、名手揃いのオーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団を想定して作曲したそう。なるほど、華やかな音がするはずだ。
かなり書き込んだ作品で、やや薄味となってはいるがラフマニノフならではのロマンティシズムが感じられ、やはり保守的な色合いが濃い。
まとめ上げるのが意外と難しそうな作品だが、演奏は、そういう特質を反映させ、全体の枠組みをしっかり構築して、情感豊かにまとめ上げた充実した内容だ。各セクションは安定し、かつゆとりがあり、特にアルト・サックスを含む管楽器グループの活躍ぶりは素晴らしい。弦楽器グループの厚みのある豊かな響きと見事に調和し、作品の持つ重量感を、尾高ならではの優れたバランス感覚によって、聴かせてくれた。
先日聴いた京都市交響楽団も、今日の札響も共に優れたオーケストラであることを再認識。特に札響の響きは北海道ならではの、湿気の少ない、きれいな空気の中で生まれるものだ、とあらためて思った。
記録を見ると、京響はびわ湖ホールがオープンしてからオペラの演奏機会が増えている。札響も、札幌文化芸術劇場がオープン後同様のことが言え、これはオーケストラのグレードアップにも繋がるだろう。
今は首都圏以外のオーケストラの充実が目覚しい。個性的で特色ある響きの、我が街のオーケストラがより一層発展することを期待しよう。
コンサートマスターは田島高宏。
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