東京芸術劇場
パイプオルガンコンサートVol.24
〜オルガニスト就任記念〜
2023年6月22日 19:00 東京芸術劇場コンサートホール
オルガン:徳岡めぐみ、ジャン=フィリップ・メルカールト
N.ブルーンス/プレリューディウム ト長調 ★
J.S.バッハ/コラール「いと高きところにまします神にのみ栄光あれ」
BWV 662 ★
J.P.スウェーリンク/「我が青春は終わりぬ」 SwWV 324 ◆
B.メルニエ/インヴェンション 第4番 ◆
J.S.バッハ(J-P.メルカールト編曲)/
ブランデンブルク協奏曲 第2番 ヘ長調 BWV 1047 ★◆
C.トゥルヌミール(M.デュリュフレ編曲)/コラール即興曲「過ぎ越しのい
けにえ」 ◆
M.デュプレ/「オルガン交響曲 第2番 Op. 26」より
第2楽章 インテルメッツォ ◆
M.レーガー/幻想曲とフーガ ニ短調 (改訂版) Op. 135b ★
C.ドビュッシー(J-P.メルカールト編曲)/『夜想曲』より 「祭」 ★◆
♪ルネサンス&バロック&モダン・オルガンを使用
★:徳岡めぐみ
♦:ジャン=フィリップ・メルカールト
今年の4月から東京芸術劇場オルガニストに就任した徳岡めぐみとジャン=フィリップ・メルカールトの就任記念コンサート。
配布プログラムによると、この劇場のオルガンはマルク・ガルニエ社製。背中合わせにオルガンケースが2つ作られ、第1の面にはルネッサンス•バロックタイプが、第2の面にはモダンタイプが演奏できように製作され、2面のオルガンはコンピューター制御によって回転する仕組みになっている。おそらく世界で唯一のユニークなオルガンだ。パイプの数は約9000本でこれも世界最大級だろう。今回はもちろん2つのタイプを鑑賞できた。
オルガンのデザインが素敵だ。ホール内が暗転し、演奏が始まると、落ち着いた色彩の照明がオルガン全体を照らし、全体像が浮かび上がる。作品ごとに、また演奏の進行ごとに色合や色彩を替え、なかなか美しい。
ステージ上部正面に作曲者と作品名が映写され、これから誰の作品を演奏するのかがわかり、これはなかなか親切。最後のドビュッシーでは演奏の様子が中継で正面スクリーン上に投影され、これも面白かった。
後半はモダンタイプ。ユニークなデザインで、これもやはり照明演出付。好き嫌いは別にして、この2面のオルガンのデザインは日本のホールオルガンの中ではおそらく最も美しいのではないか。これを見るだけでも楽しい。オルガンとオルガン音楽普及には大切な要素だろう。
メルカルトは札幌コンサートホールの専属オルガニストを2003年から1年間務めた後、ヨーロッパで勉強し、再び日本で活躍している。徳岡は現在豊田市コンサートホールのオルガニストも務めており、2人とも演奏歴は申し分ない。共に安定した演奏で、今日の演奏を聴く限り、おそらく日本で聴ける最も優れたオルガニストだと言ってもいいだろう。いつも楽器から音楽的に自然で、いい音を生み出すことができる。
メルカルトは編曲と近現代の作品が特にいい。前半、バロックオルガンで、ベルギーの現代作曲家、メルニエの作品を演奏、前半ではこれが最も充実した音色だったように思う。また、バッハとドビュシーの編曲がよく、バッハでは原曲のソロ楽器の扱い方が面白く、ドビュッシーは、この楽器の特性を見事に活かした編曲で、原曲のイメージそのままで、オルガンが最も美しく響く音域での表現が印象的だった。
ソロではトゥルヌミールとデュプレがいいニュアンスの感覚を感じさせ、好演。
徳岡は前半のバッハと、後半のレーガーのドイツ作品がしっかりとした骨格を感じさせる立体感のある演奏。特にレーガーは名演で、これだけレーガーをしっかりと聴かせてくれるオルガニストはなかなかいないのでは。
ここのオルガンの響きはビルの中にあるという設置場所の特質にもよるだろうが、迫力ある低音域の響きはあまり感じさせない。だが、低音域が比較的クリアで、かつ全音域全体でまとまりのある響きがするのが特徴だろう。もう少し残響のあるホールトーンが欲しいところもあるが、ルネッサンスからモダンまで幅広いジャンルを可能な限りオリジナルの編成で楽しめ、かつ明確な音像で作品の全体像を把握出来るのが特徴だ。
今後の2人の活躍に期待しよう。
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