札幌交響楽団第654回定期演奏会
2023年6月25日13:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/広上 淳一(札響友情指揮者)
ピアノ/反田 恭平
管弦楽/札幌交響楽団
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
ドビュッシー:イベリア(管弦楽のための「映像」より)
ラヴェル:スペイン狂詩曲
反田恭平のラフマニノフが素晴らしかった。難曲と言われるこの作品を見事に手中に収め、聞き応えがあった。
若々しいエネルギーに満ち、一切迷いがなくストレートに感情を表しているように感じさせる演奏で、なかなかの逸材だ。
一方で、余計な粉飾を一切省いて、しっかりとした骨組みを築き上げ、ラフマニノフの濃厚なロマンティシズムを表現する、というよりはどこか冷静に作品を一歩引いて遠くから観察して客観的に仕上げていく、老成した音楽観も持ち合わせているようだ。楽器と音楽に没頭し過ぎない、絶妙なバランス感覚を感じさせる。
ピアノ演奏に関しては、出来ないことは何もないようで、どんなに難しいパッセージでも難なく弾けるし、第3楽章フィナーレでオーケストラが最大音響で盛り上げていても、ピアノは埋もれずにきちんと聞こえてくる。しかも音が割れることもなく、楽器を音楽的に響かせることができる。歯切れいい抜群のリズム感と冷静な技術的コントロールはこの世代では群を抜いた存在ではないか。今後どのように変貌していくのかがとても楽しみだ。アンコールにシューマン=リスト/献呈。これもバランス感覚の良い演奏だった。
後半はロシアから南欧へ舞台を移して、広上のドビュッシーとラヴェル。いつものように、広上の指揮は強引にオーケストラをドライブすることがない。オーケストラがリラックスしていて、出てくる音が自然で無理がなく、とても聞きやすく、いい音がする。
ドビュッシーは、オーケストラの音色が柔らかく、力まないで響いてきて、南国的で気だるい、民俗的な雰囲気が見事に表現されていた。けっして洗練された演奏ではないが、ドビュッシーならではのまろやかでふくよかな響きで、暑い日の憂鬱な世界を感じさせ、好演だった。
ラヴェルは、ドビュッシーよりクールな感性を感じさせ、透き通った涼しげな音色で、客観的に異国情緒の世界を現していた。もちろん、2人の作曲技法の違いがあるにせよ、作風の違い、オーケストレーションの違いを、これほどわかりやすく聴かせてくれたのは見事だ。
真貝裕司が久しぶりにカスタネットの名技を聴かせてくれ、楽しかった。
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