びわ湖ホール プロデュースオペラ
R.シュトラウス 作曲 『ばらの騎士』全3幕
2024年3月3日14:00 びわ湖ホール・大ホール
指揮/阪 哲朗
演出/中村敬一
管弦楽/京都交響楽団
元帥夫人:田崎尚美
オックス男爵:斉木健詞
オクタヴィアン:山際きみ佳
ファーニナル:池内 響
ゾフィー:吉川日奈子
マリアンネ:船越亜弥
ヴァルツァッキ:高橋 淳
アンニーナ:益田早織
警部:松森 治
元帥夫人の執事:島影聖人
ファーニナル家の執事:古屋彰久
公証人:晴 雅彦
料理屋の主人:山本康寛
テノール歌手:清水徹太郎
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル /大津児童合唱団
阪哲朗のびわ湖ホール芸術監督就任の初公演、2日目を聴く。
物語はご存知のように、好色な田舎貴族が地位を利用してセクハラを続け、更に政略結婚を企てるが、逆に弾劾され、すごすごと引き下がる。
これに青年貴族と浮気している元帥夫人が絡む。演出家が読み替えしたくなるような内容だが、もちろん当然今日はオリジナルに従った演出。
舞台セットは18世紀の貴族の館をコンパクトに作り上げていて、特に第2幕のファーニナルの居館は奥行きがあり、第1幕の元帥夫人の居室より豪華な雰囲気。ばらの騎士が登場するシーンは期待感を抱かせ、かつ華やかなさもあってとてもよかった。第3幕は見慣れた地下の居酒屋。セットは全幕で舞台天井まで作り上げておらずこれは予算削減かと思ったが、第3幕で騒動が収拾したあとで、夜空で星がキラキラするシーンが見えるようになっており、それまで気がつかなかったが、当初から空を意味していたのかもしれない。
主だった役柄の衣装は18世紀にこだわらずに色々な時代の服装だったようだ。召使たちはタキシード着用など現代風の衣装だったが、すべて違和感はなかった。
昨年までのワーグナーで名演を聴かせた京響が、今回も大健闘。今日はおそらくリハーサルなど音出しの機会がないまま、いきなりの演奏で、この作品の場合はかなりシビアだったのでは。冒頭はやや不調気味だったが、1幕後半から本調子になったようだ。ワーグナーのように力技で勝負できる作品とは違い、濃厚でまとわりつくような表現など淡白な日本のオーケストラだと苦手な表現が多いが、今日の京都交響楽団はかなり熱演。重箱の隅を突けば色々あるのかもしれないが、幕が進むに連れて、弦からはかなり厚みのある音と豊かな表現が聴こえてきてた。阪の指揮ぶりが光った演奏。
オックス男爵の斉木健詞 は、今までここの劇場で観た見事なワーグナー役からするとガラリと違う雰囲気の役柄だ。斉木はどちらかと言うとドン・ジョバンニ風の体型と声で、体型にもう少し膨らみがあると好色貴族の雰囲気がより出たのかもしれないが、コミカルな雰囲気がよく出ていてとても楽しめた。
元帥夫人の田崎尚美は、冒頭からオクタヴィアンを圧倒する大人の色気が感じられ、一幕後半のオクタヴィアンが再登場する頃からは、色気に元帥夫人らしい落ち着きと威厳が加わり、こちらも好演。
オクタヴィアンの山際きみ佳は若々しい情熱あふれる演技と歌で、今日の公演を観る限り最も存在感があった。全幕の重要なシーンで必ず登場するためでもあるが、その都度色々な感情の変化を表現、聴衆を魅了してくれた。
ゾフィーの吉川日奈子はやや硬めながらも役柄の年齢に相応しく、熱演。ファーニナルの池内響、警部の松森治はともに好演。特に警部は第3幕での主役かと思うほどの存在感があり、オックス男爵を完全に食っていたが、劇の進行から行くとちょどよかったのかもしれない。そのほかの出演者もドタバタ喜劇にならずに、全体的によくまとめ上げられていたいい上演だった。
字幕は全体的に意訳が多過ぎて、細かいストーリー進行がわかりにくところがあったのは残念。
来年度はコルンゴルドの「死の都」。名演出家の故栗山昌良による舞台。来年度のびわ湖ホールは栗山昌良イヤーで、さらに2公演予定されている。彼には伝説的な名演出の蝶々夫人(最近では2022年9月11日新国立劇場)があるが、それ以外の演出をまとめて鑑賞できる絶好の機会になる。
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