ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
2024年11月17日16:00 サントリーホール
指揮/アンドリス・ネルソンス
ピアノ/イェフィム・ブロンフマン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37
R. シュトラウス:交響詩『英雄の生涯』作品40
今日のコンサートマスターはシュトイデ。ベートーヴェンを弾いたブロンフマンは、楷書体でお手本のようなオーソドックスな演奏スタイル。おそらく楽譜にできるだけ忠実でインテンポによる見事な均整感ある演奏で、オーケストラとのアンサンブルも完璧。全て予定調和で文句のつけようがない。そのためでもないだろうが、ブロンフマン、カデンツァ(ベートーヴェン自身によるもの、これも定番メニュー)以外を除いて指揮者をほとんど見ることがない。
オーケストラはさすがにいい音がしていて、最初のオーケストラだけの提示部はバランスよく弦の響きが心地良い。シュトイデの演奏がソリストのようにはっきりと聴こえてきたのも意外だったが、メリハリのある明確な表現で聞き応えがあった。
ソリストとのアンサンブル時は音量を抑え慎重にソリストを引き立て、オーケストラだけになると俄然生き生きと生命力あるスケール感ある演奏を聴かせる。このコントラストが面白かったが、丁々発止のやり取りは全くなく、協奏という意味からすると今ひとつ物足りなさを覚えたのは否定できない。
ソリストアンコールでシューベルトのピアノソナタ第14番イ短調 D. 784 より第2楽章から。これは繊細な表情でとても良かった。今日の楽器はスタインウェイだったが、乾いた音色で必ずしもベストの響きがしていたとは思えない。
「英雄の生涯」は、このオーケストラの底力を存分に示してくれた快演。ダイエットしたのか、スマートになったネルソンスがオーケストラを伸び伸びと響かせた気持ちのいい演奏。やはりオーケストラから最も良い響きを引き出すことができる指揮者なのだろう。重厚で底力のある音で、オーケストラの醍醐味を存分に伝えてくれた。
どのセクションもやはり上手い。シュトイデのソロは優美というよりは鋭さのあるかなり戦闘的な演奏。ただ、ソロであっても全体的な音響的バランスの中で音色が統一されていて、この感覚は素晴らしい。管楽器群のソロ、アンサンブルは、ただ勢いよく吹くのではなく、音質や響きのバランスなどがよく練られていて、やはり一級品。評論家を揶揄する管楽器群のアンサンブルの箇所など、評論家のやかましいおしゃべりぶりを強調したのか、生き生きと表現され愉快。
このオーケストラならではの研ぎ澄まされたアンサンブル感覚の上に、熟練した各パートの演奏が積み重なって豊かな音響世界が繰り広げられ、聞き応えのある見事なシュトラウスだった。
これだけ管楽器が活躍する作品の後では、日本のオーケストラの場合、管楽器を休ませ弦楽器だけのアンコールを演奏する場合が多いが、さにあらず、管楽器も活躍するシュトラウスの作品が2曲。
J. シュトラウスⅡ世:ワルツ『人生を楽しめ』作品 340とヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『飛ぶように急いで』 作品 230。これはレパートリーに入っているのだろう、実に手慣れた演奏でこのオーケストラならではの自由闊達な表情で存分に楽しませてくれた。
余談だが、この日の朝の8:30のANA 52便で上京。これがコンピュータの不具合とかで機内で1時間ほど待たされた後、降ろされ地上で待機。
その後メッセージが入るたびに出発が遅れ結局出発が13:10ごろ。実に5時間近くの遅延。羽田着が14:35、重い手荷物を持ってサントリーホールに直行、到着が15:35。開演に無事間に合う。冷や冷やの旅行だったが、最近航空機の遅延がやたらと多い中これは酷すぎる。間に合わなかったらチケット代を補償してくれたのだろうか。
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