札幌交響楽団名曲シリーズ
森の響名曲コンサート~すべての道はローマに通ず:ローマ三部作
2024年11月 9日 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮 /川瀬 賢太郎
管弦楽/札幌交響楽団
レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ 交響詩「ローマの松」
レスピーギ 交響詩「ローマの祭り」
ローマ三部作全曲がこのホールで初めて演奏されたのは、札幌コンサートホールKitaraの開館2日後の1997年7月6日のオープン記念コンサート(指揮は秋山和慶)。オルガンが入っていて、華やかでオープニングシリーズにふさわしい曲目としてセレクトされたと記憶している。もう27年も前のことだが、ホールの響きは安定し、札響も当時とは全く違う素晴らしいオーケストラとなった。
川瀬は1984年生まれ。指揮者としてはまだ若手なので、華麗にオーケストラを鳴らし、若さに満ちあふれた元気いっぱいのコンサートになるのではと思ったが、さにあらず、実に落ち着いた音楽性豊かなローマ三部作で、この作品の素晴らしさをじっくりと堪能できた演奏会だったと言える。
「ローマの噴水」は、噴水の様子を静謐で情緒的に表現。時折現れるフォルテシモは鮮やかに噴水が飛び跳ねるように聞こえ、まさしく標題そのものの情景が目に浮かんでくるような表現だ。派手ではなく豊かな情景描写に主眼を置いたこの方向性は全4曲通して全くブレることがない。多種多様な楽器が登場するが、バランスがよくピッチはきれいに統一されていて気持ちがいい。爽やかで息の長い音楽が展開されて、とても印象に残るいい演奏だった。
「ローマの松」でも、必要以上にオーケストラをがなり立てる事がなく、強奏でも響きが割れず、聴きやすい。終曲の「アッピア街道の松」は歩みが慎重で、もっと前向きで派手に演奏してもいいのに、とちょっともどかしいところもあったが、どこのフレーズをとっても音楽的によく歌われていて、無機質な表情が全くなく、とても好感の持てる秀演だ。
「ローマの祭り」では終曲の「公現祭」に向かって徐々に盛り上げていく。随所で聴かせるソロはみな音楽的で上手い。ただ上手いだけではなく、それぞれの場面の情景をよく表情豊かに表現しており、オーケストラ全体がこれだけ色彩感豊かに響いて来たのは久しぶりだ。
全体を通してオーケストラが終始バランスよく響いていたのは特筆すべきこと。川瀬のよく考え抜かれた表現も見事だったが、オーケストラの各セクションの充実ぶりが実に素晴らしい。ハリウッド映画のごとく劇的に描写した作品(当日配布プログラム解説)かどうかはよくわからないが、この作品はやはりライブで聴かないとその音響的素晴らしさはわからない。
オーケストラに登場する楽器がほぼ出揃う華やかな編成で、今日のようにとても表情豊かな演奏で聴くと、レスピーギの見事なオーケストレーションと変化に富んだ音楽の素晴らしさを改めて認識することができる。エキストラには懐かしい顔ぶれもいて、視覚的にも大いに楽しめた演奏。
子ども向けの音楽鑑賞教室用プログラムとして最適な気もするが、ちょっと編成が大きすぎて実現は難しそう。
アンコールに、マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲。レスピーギの熱演の後でオーケストラの音色がややお疲れ気味だったのが惜しい。
コンサートマスターは会田莉凡。
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