第1009回サントリーホール定期シリーズ
東京フィルハーモニー管弦楽団
2024年11月19日19:00サントリーホール
指揮/アンドレア・バッティストーニ(首席指揮者)
東京フィルハーモニー管弦楽団
マーラー:交響曲第7番『夜の歌』
バッティストーニはこの交響曲は初めてで、東フィルは22年ぶりだそうだ。
これはバッティストーニならではのマーラー。メリハリがあり、表現はクリア。音楽は隙無く先にどんどん進む前向きの演奏。エッジの効いた、鋭く振幅の大きい表情で、よく歌い込まれている。オーケストラを見事にまとめ上げた充実した演奏だ。
この交響曲は聴く機会が少なく、理解しにくい作品だが、それにしても今まで聴いたことのない演奏だ。これが正解とは思わないが、一つの解決策を聴衆に示してくれたのではないか。
どの箇所をとってもよく歌われ、時にはリヒャルト・シュトラウス風だったり、時にはオペラの愛の場面のようだったりと、様々な場面、表情が次々と現れてきて、とても面白い。ハンガリー風だったり、ロシアの舞曲が現れたり、イタリアオペラの一場面風と思わせたり、と世界諸国漫遊をしているようだ。
色々な国の音楽が聞こえてくるような錯覚を受け、これは普段は気が付かない、ひょっとしてマーラーの幅広い音楽観を過不足なく表現していたのではないか、と勘ぐったりもする。
第1楽章はもっと繊細な表情があってもいいと思ったが、振幅の大きなスケール感があり、かなりすっきりとまとめ上げられていた印象。
第2楽章と第4楽章の夜の歌は、濃厚でたっぷりとした表情で両楽章とも夜のイメージはあまり感じられないにしても、あちこち散文的に登場する様々なモティーフが色彩感豊かに大きく一つにまとめられていて、とても聴きやすかった。
バッティストーニの特徴がよく現れていたのは第3楽章のスケルツォ。「影のように」、とマーラーは指示しているが、躍動感があり、明るく伸びやかで屈託のないスケルツォ。
最終楽章は、書法にもよるのかもしれないが、それまでの楽章が濃密に表現されていたこともあり意外と淡白な表情に聴こえてきて、マーラーの抱いたと思われる破天荒なフィナーレとならなかったのが逆に面白かった。今日は14型の編成だったが、バッティストーニ、フィナーレだけは弦楽器を充分鳴らし切ることができなかったようで、ちょっと残念。
オーケストラは大健闘で、特に管楽器群の充実ぶりが素晴らしかった。
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