PMF GALAコンサート
2025年7月27日15:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
【第1部】
ファニー・クソー(第25代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
パシフィック・クインテット
アリーア・ヴォドヴォゾーヴァ(フルート)
フェルナンド・ホセ・マルティネス・サヴァラ(オーボエ)
リアナ・レスマン(クラリネット)
長谷川花(ファゴット)
ヘリ・ユー(ホルン)
【第2部】
指揮/マレク・ヤノフスキ
チェロ/スティーヴン・イッサーリス*
PMFアメリカ
PMFオーケストラ
【第1部】
【ファニー・クソー】
◆R. シュトラウス(F. クソー編):ツァラトゥストラはかく語りき 作品30
◆ワーグナー/リスト:歌劇「タンホイザー」から巡礼の合唱
【パシフィック・クィンテット】
◆バーンスタイン (D. スチュワート編):「キャンディード」序曲
◆モーツァルト (メイヤー編):アンダンテ ホ長調 K. 616
◆クルーグハルト:木管五重奏曲 作品79
◆サリー・ビーミッシュ:ネーミング・オブ・バード
◆ラヴェル(M. ジョーンズ編):クープランの墓
【第2部】
◆ワーグナー:歌劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲
◆シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129*
◆シューマン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」
◆R. シュトラウス:交響詩「死と変容」作品24
まず第2部から。ヤノフスキーは今年86歳、PMF登場の最高年齢指揮者かもしれない。ただし、年齢を感じさせない見事な統率力と落ち着いた音楽づくりはさすがベテラン指揮者で、貫禄充分。
冒頭のワーグナーは16型を基本とする大編成で、今回は舞台下手側からヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの配列。ヴァイオリンが主役で、様々な音型を奏でながら音楽が進むが、それがどうもざわついているようで、何をどのように表現したいのかが、よくわからない。そのうち落ち着くだろう、と思っているうちに終了してしまった、というのが正直な印象。やや不消化の状態で、残念。
シューマンのソリストはスティーヴン・イッサーリス。2005年に札響定期でエルガーの協奏曲を演奏している。おそらくそれ以来の来札か。個人的には10年ほど前にブダペストで室内楽のメンバーとして熱演していたのを偶然聴いた。いいチェリストだ。
トレードマークの長髪を振り乱し、情熱的でエネルギッシュな演奏のシューマン。作品は決してスマートではないが、奥に潜むシューマンならではの熱い情念が見事に表出された名演だった。響きが翳るところもあったが、演奏の際に使用したチェロ台のためか。ここのホールはチェロ台を使わない方がよく響くような気がする。オーケストラはヤノフスキーがよくまとめ上げ好演。
後半のシューマンの交響曲はよく練られた演奏でさすがヤノフスキー。弦楽器セクションがPMFならではの大人数でこんなに大きな編成でこの交響曲を聴いたのは初めてだ。ただし冒頭のワーグナーでのざわついた響きはなく、ここでは大編成ならではのゆとりのある深く居心地のいい弦楽器の響きを創出していた。
しかもその響きは明るい音色というよりは最近あまり聴く機会が少なくなった、どちらかと言うと渋めの音色。PMFオーケストラではあまり聴けないベテランオーケストラ風の重厚感があり、中々いい音だった。
ホルンを中心とした管楽器群もバランスの取れた力みのない音を出しており、弦楽器の大群とよく調和。
全体的にはヤノフスキーが大編成オーケストラを見事に統率、バランス感覚に優れた中庸な解釈でいいシューマンを聴かせてくれた。
後半さらにもう一曲、R. シュトラウス。これまではPMFアカデミー生だけによるオーケストラだったが、ここからはコンサートマスターにヌリット・バー・ジョセフが座るなど、要所要所にPMFアメリカ教授陣が加わった豪華布陣。さすがに良質な響きと卓越したソロなどが聴こえてくる。オーケストラのトッププレイヤーが数人加わるだけで、こんなに響きが変わる体験ができるのはPMFならでは。
フィナーレに相応しい豪華絢爛な大編成だが、ヤノフスキーが暴走しがちな若々しいエネルギーを見事にコントロール。派手過ぎず、地味にもならず、音楽的に見事にまとめ上げた、スケールの大きい演奏を披露。味わい深い職人的指揮で、R. シュトラウスの豊穣な響きをホールいっぱいに響かせ、聴衆を楽しませてくれた。
ガラコンサート前半は札幌コンサートホール専属オルガニストのファニー・クソーの演奏とPMF参加を機会に編成されたパシフィック・クインテットの演奏があった。
オルガンソロはやや軽めのプログラムで、Kitaraのオルガンの持つ優れた機能が充分発揮されておらず、ちょっと残念。せっかくの機会なのでもっと重厚な作品が聞きたかった。
パシフィック・クインテットは若々しくエネルギッシュな演奏。ただ、最後はちょっとお疲れ気味だったようだ。聞き手としては後半の第2部も考えて、もう少し短いプログラムで、中身をもっと濃い演奏にした方が良かったような気がする。
今回のガラ・コンサートは15:00開演で、2回の休憩挟み、終演は19:00。第1部、第2部共に少々長めで、プログラミングにもう少し工夫が欲しかった。