2025/07/25

 PMFホームカミング・オーケストラ演奏会


2025年7月24日19:00  札幌コンサートホールKitara小ホール


指揮/ダヴィッド・ルンツ
ゲストコンサートマスター/郷古廉
PMFホームカミング・オーケストラ
南部麻里(ピアノ)


ペンデレツキ:古い様式による3つの小品

ルトスワフスキ:クラリネットとアンサンブルのための舞踏前奏曲
W. キラル:オラワ
モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K. 551「ジュピター」


 

 PMF35周年記念で、PMF修了生で編成する今日1日だけのオーケストラ。メンバーは地元札幌交響楽団をはじめとする世界各国から来札した約40名のメンバー。

 臨時編成とは言え、全員が経験豊富なオーケストラ団員なので、アンサンブルは今日聞く限り全く問題はない。

 ただ、会場が小ホールで、室内オケとは言え、この規模のプロフェッショナルのアンサンブルを聴くには響きが飽和状態。

 聴衆にとってもやや辛いし、オーケストラ側でも、おそらくお互いのパートを聴き合いながらアンサンブルを組み立てて行くことはかなり辛かったのではないだろうか。

 大ホールであれば気にならない些細なミスやノイズもはっきりと聴こえてしまい、聴衆にも演奏者にも多少の居心地の悪さがあったのは否定できないだろう。


 さて、そういう物理的な問題は別にして、演奏はさすが修了生、と言うよりは現職のオーケストラ団員ならではの安定した優れた内容のもの。技術的にも音楽的にも申し分ない。

 指揮は21日のホストシティ・オーケストラ演奏会でいい演奏を披露してくれたダヴィッド・ルンツが再び登壇。

 前半は全てポーランド人作曲家の作品ばかり。冒頭のペンデレツキは1963年の作品だが、古典的作風で、これが本当にペンデレツキ?、と思わせるほど古風なスタイルの作品。むしろ2曲目のルトスワフスキーの方がより現代性があり、わかりやすく、現代にも充分アピールできる内容。1954年の作品だが、民俗音楽をクラシカルにまとめ上げ、普遍性を与えた作品として高く評価できるのではないか。クラリネットソロのリアナ・レスマンが好演。ルンツも冒頭のペンデレツキでは腕の見せ所がなかったが、ここではソリスト共々冴えた音楽を聴かせてくれた。

 キラルの「オラワ」は1986年の作品。単純明快なリズムパターンを反復させながらオーケストラの編成の妙によって様々な表情を聴かせる佳品で、これは歯切れの良い決断力ある指揮と、抜群のテクニックで活力ある表情を創出し魅了させてくれた演奏者があってこそ。飽きさせない、いい演奏だった。


 後半のジュピター交響曲は全体的に良くまとめ上げた演奏。彫りが深く、細部をとてもよく磨き上げ、フレーズ一つ一つを繊細な表情でよく歌い上げていく。例えば第2楽章の繊細で美しい表情、メヌエット楽章の冒頭の主題の歌い方などとても印象的で、その彩りの豊かさはこの指揮者ならでは。

 終楽章のフーガもよく練れていて、わかりやすい。無造作に表現するところが一切ないのが素晴らしい。その誠実さと豊かな歌心がこの指揮者の美点なのだろう。また演奏者の集中力を高める指揮者でもあり、その隙のない見事な統率力にも感心させられた。

 小ホールで聴くにはギリギリのサイズで、ちょっと耳が痛くなる音量。大ホールで聴くともっと全体的にゆとりのある響きで鑑賞できたのかもしれない。

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