PMFホストシティ・オーケストラ演奏会
2025年7月21日14:00 札幌コンサートホール Kitara大ホール
指揮 /ダヴィッド・ルンツ
管弦楽/札幌交響楽団
共演 / PMFアメリカ・メンバー、PMFオーケストラ・メンバー *
シューベルト:交響曲 第7番 ロ短調 D 759 「未完成」
ショスタコーヴィチ:交響曲 第10番 ホ短調 作品93 *
指揮のダヴィッド・ルンツは、PMFには、17年にコンダクティング・アカデミーに参加、20年に指揮者として参加予定だったがコロナ禍で音楽祭が中止、今回再来日が実現した。主に東欧を中心に、現在はクロアチア、ポーランド等で活動しているようだ。とても明確でわかりやすい音楽を作る指揮者で、2曲とも好演だった。
「未完成」交響曲は標準的な全体設計。テンポは速くもなし遅くも無しで、表情はメリハリがあってわかりやすい。冒頭のチェロ・バスのテーマ、続くオーボエのソロなどとてもクリアに表現しており、健康的。ここは指揮者の腕の見せどころだが、この指揮者ならでは、という個性的な表現は特に無い。この調子で音楽は順調に、滑らかに流れて行き、見通しのいい颯爽とした雰囲気の演奏だ。やや単調になりがちなところもあったにせよ、特筆すべきことは、札幌交響楽団からとても良質のいい音色を引き出していたこと。
ホルンにPMFアメリカ、弦楽器群にPMFアカデミー生が加わっていたが、全体的にはいい響きで音程もきれいに揃っていて、聴いていてとても気持ちが良かった。
ショスタコーヴィッチは快演と言ってもいいだろう。細部まで仕上げられており、作品の輪郭が明瞭に表現されていてわかりやすい。弦楽器の16分音符の速い音型などもクリアで切れ味鋭く見事に揃っており、鮮やか。ルンツが札響の実力を余すところなく引き出し、前半のシューベルト同様オーケストラが充実しており、なかなか聞き応えのある演奏だった。
この作品については1953年の初演当時は旧ソ連内や海外でも様々な意見が交わされたが、作曲者自身は多くを語らなかったようだ。今日の演奏を聴いていると、当時の暗い時代背景が思い浮かばないこともないが、それよりも作曲者の卓越した才能を存分に感じることができる。比較的単純な動機からスケール感あふれる芸術作品に仕上げていくプロセスが手に取るようにわかるし、同時に、その独特の厚い響きも見事に再現されていた。
初演からすでに70年以上も過ぎ、作品に内蔵された当時の様々な諸相よりは、普遍的な意味での解釈が可能な優れた芸術作品として、ショスタコーヴィッチの世界を聴かせてくれた快演だった。
一方で、札幌交響楽団の持っているプロフェッショナルな職人技が随所に光る完成度の高い演奏で、PMFのゲストプレイヤーが加わることによって、定期などの札響主催公演とは違った、ちょっとよそ行きのすました雰囲気も感じられ、札響のいつもとは違う側面と良さが引き出されていたと思う。
聴衆は毎年少しずつ増えてきているようだ。ホストシティ・オーケストラとしてとてもいい内容のコンサートで、今後も札響の活躍を大いに期待したくなるような公演だった。
コンサートマスターは田島高宏。

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