2022/11/04

 ファビオ・ビオンディ&

エウローパ・ガランテ


202211月2日19:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮&ヴァイオリン/ファビオ・ビオンディ

古楽アンサンブル/エウローパ・ガランテ


コレッリ:合奏協奏曲 第4番ニ長調 Op.6
ジェミニアーニ:合奏協奏曲 第3番ト短調 Op.3
ロカテッリ:合奏協奏曲 第5番ニ長調 Op.1


ヴィヴァルディ:四季
  「春」RV269
  「夏」RV315
  「秋」RV293
  「冬」RV297


 

 エウローパ・ガランティは1990年の設立なので、もう30年以上を経過している。

 イタリアの作品がレパートリーの中心だが、現在はオペラも手がけるなど、その活動の幅はさらに広がっているようだ。


 アンサンブル全体の響きは、今回聴いた席(CB 上段の上手側)では、やや硬めの、渋い音色。通常の古楽アンサンブルの特徴である、緻密な仕上げ、美しいハーモニーやノンヴィブラートの音色など、このような段階はもう到達してしまい、演奏目的はイタリア・バロックの作品に強烈な生命力を与え、骨董品ではなく現代に生きる新たな作品として、蘇生させることにあるようだ。

 躍動するリズム感、強烈なアクセント、自由自在な表現、どれをとってもダイナミックで、とてもアクティヴだ。生命力があり、しかもエンターテインメント的な聴かせどころをわきまえた職人的な集団でもある。それらを全く嫌味に感じさせないで演奏するところが素晴らしい。


 ヴィヴァルディの四季が面白かった。全体的には、もちろん正確で整ったアンサンブルだが、その様式美よりは、表現に明確な抑揚をつけ、スコアに添付されたソネットの内容を写実的に、わかりやすく紹介する演奏だ。ビオンディのソロは、技巧的な側面を強調した表現で、速めのテンポで、駆け抜けるように演奏しているが、これがソネットの描写と一体化されているところが面白い。

 印象に残ったところをいくつか。「春」で、牧草地で大きく吠える猟犬の様子。かつてアーノンクールも同じような試みをおこなっていたが、こちらの方がより規則的で大きな吠え方だ。

 「夏」では、激変する天候とハエや虫に悩まされ、うんざりして暮らす羊飼いの様子など、暑苦しい夏が見事に表現されていた。きっと当時のイタリアの夏は過ごしにくい嫌な季節だったのだろう。

 彼らの演奏を聴く限り、「秋」が一番いい季節だったようだ。ビートの利いたリズムでの、第楽章の賑やかな祭りの様子、第楽章の狩りに出かける生き生きとした情景などが鮮やか。面白かったのは、酒宴後の眠りこける男達を描いた楽章の個性的なチェンバロソロ。この楽章のチェンバロソロはマリピエロの校訂した通奏低音譜や,それに基づいた形で演奏する例が多いが、今日のはおそらくチェンバリスト自身の作曲によるもの。かなり書き込まれていて、即興的要素は少なかったにせよ、今まで聴いたことのないユニークな表現で印象に残った。

 「冬」では、第2楽章で、弦の通奏低音が一緒にヴァイオリンの伴奏形を弾いていたのが印象的。暖かい暖炉で過ごす楽しげな様子がより賑やかさを増して聴こえてきた。


 前半のプログラムは、コレッリの技巧的でコンチェルト風な求心的表現、ジェミニアーニの伸びやかで深い歌心、ロカテッリのこだわりのある玄人好みの音楽構成など、それぞれの作品の個性の違いが表現されており、それらが皆自然で作為的なところが全くないのが素晴らしい。

 失礼ながら,この時代のイタリアでは皆同じような作品を書いているように思えたが、それは大きな誤り。こうして聴いてみると、各作曲家が強い個性を持っており、その違いをごく自然に、的確に表現出来るのは、さすが熟練のイタリアのアンサンブルならではだ。


 古楽アンサンブルは気軽に聴けて、しかも個性的で演奏レベルがとても高く、楽しみが多い。コロナ禍はまだまだ落ち着かないが、是非このシリーズを続けて欲しい。


 終演後、ビオンディがサイン会。サイン会が行われるのは久しぶり。今日はクロークが開いていて、次第に通常の状態に戻りつつあるのは,うれしい限りだ。

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