森の響フレンド札響名曲コンサート
~日曜日の宗利音
2022年11月6日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮 /松本 宗利音
ピアノ /松田 華音
管弦楽/札幌交響楽団
バラキレフ:3つのロシア民謡の主題による序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ムソルグスキー:歌劇「ホヴァンシチナ」前奏曲"モスクワ川の夜明け"
ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より"だったん人の踊り"
ハチャトゥリアン:バレエ「ガイーヌ」より"剣の舞"、"子守歌"
チャイコフスキー:スラヴ行進曲
松本は、札響主催では、新•定期演奏会hitaruシリーズ第8回(2022年2月17日、札幌文化芸術劇場hitaru)に登場して以来。このときはベートーヴェンの英雄交響曲で若々しい熱演を聴かせてくれたが、今日はロシア物を集めた名曲集。
全体的に脂っこさを感じさせないすっきりとした仕上がり。オーケストラの音色は札響らしい透き通ったいい音がしており、休日の午後に聴くのにふさわしい出来栄え。この種のプログラムは食傷気味になりがちだが、聴きやすくまとめ上げていたのではないか。
松田華音をソリストに迎えたチャイコフスキーが素晴らしかった。スケールの大きな力感あふれる演奏で、かつよく歌い込んだ、聴き手を満足させる表現力豊かなテクニックの持ち主である。オーケストラは、やや焦点の定まらない箇所もあったにせよ、力演で楽しめた。今日の使用ピアノはもう少し潤いがあれば、とも思ったが、いい音がしていた。
ソリストアンコールにチャイコフスキーの小品(18の小品op.72より第18曲「踊りの情景(トレパークへの誘い)」)を弾いたが、これまたエネルギッシュな作品で、とてもタフなピアニストのようだ。
プログラム後半はグリンカから開始。これはオーケストラの腕前を披露するショーピース的作品で、特に弦セクションの引き締った鮮やかな演奏が素晴らしく、存分に楽しめた。
良かったのはムソルグスキーで、やや間延びしたところもあったにせよ、管楽器のソロと弦楽器の調和、透き通った弱音の響きがとてもきれいで、これは札響以外からは聴けない良質の響きだ。こういう演奏をいつも聴いていれば、戦争なんぞする気にはならないだろう、と思う。
すっきりとしたボロディンの演奏のあと、ハチャトゥリアンや最後のチャイコフスキーになると,同種の作品の連続で、ちょっと聴く方も疲れ気味。これらの作品では、管楽器の響きがやや大き過ぎて、弦楽器の動きがぼやけたところもあったにせよ、迫力ある響きがホール内に広がり、スケールの大きな演奏で楽しめた。
プログラム全体を俯瞰すると、老獪な指揮者だったら、適当に迫力で誤魔化すところも,誠実にきちんと仕上げており、ディテールが明確で、中々聞き応えのある、いい演奏会だった。
アンコールに、大活躍した管楽器をお休みさせてのチャイコフスキーの弦楽セレナードからワルツ。これはやや練習不足の感があったにせよ、聴き手も大きな響きから解放され、安堵感を感じさせたきれいな演奏だった。
コンサートマスターは会田莉凡。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。