教会音楽の夕べ2024年
ウィリアム・フィールディングオルガン演奏会
6月20日18:30 札幌北一条教会(札幌市中央区北1条西13丁目)
オルガン/ウィリアム・フィールディング
(第24代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
J.S.バッハ:幻想曲とフーガ ト短調 BWV 572
M.デュリュフレ:前奏曲(「前奏曲、アダージョとコラール変奏曲」より)
H.ハウエルズ:3つの詩篇前奏曲 Op.32より「第1集 第3曲(詩篇23)」
W.A.モーツァルト:自動オルガンのための幻想曲 へ短調 KV594
L.ヴィエルヌ:プレリュード/インテルメッツォ(間奏曲)
(「幻想的小品集 組曲第1番 Op51」より)
ヒム・オ・ソレイユ(太陽への讃歌)
(「幻想的小品集 組曲第2番 Op53」より)
ここの教会のオルガン(北一条教会オルガン)は3段鍵盤、ストップ数が21、パイプ数1523本の中規模サイズ。1979年の設置で、札幌市内では比較的歴史のある楽器だ。中心街にある場所の利を生かし、ほぼ1月に一度のペースで継続的にオルガン演奏会を開催しており、固定ファンも多いようだ。
今回は毎年恒例の札幌コンサートホール専属オルガニストによるコンサート。
フィールディングの演奏は、何度かこの欄で紹介しているが、どこの楽器からも無理なく美しい響きを生み出し、作品の本来像を自然な形で聴かせてくれる優れたバランス感覚を持ったオルガニストだ。毎回幾人かの作曲家は共通だが、必ず違う作品を演奏し、プログラミングが重複することがないのもすばらしい。
ここの教会のオルガンを聴くのは久しぶりだが、以前と比較するとオルガンの音が随分美しくなった印象を受けた。おそらく常日頃の手入れが行き届いていることと、演奏会に何度も使用されていること、フィールディングの無理のない演奏法等によるものだろう。
今回のプログラムの中では、フィールディングの母国イギリスの作曲家、ハウエルズの作品が楽しめた。彼は札幌コンサートホールでのデビューコンサートでもハウエルズを演奏しており(2023年9月30日)、おそらく札幌では彼以外演奏していないと思われる。
今日演奏した作品は、背景に作曲者が当時直面していた健康上の問題と第一次世界大戦時の暗い影が反映されているようで、万人に共通な苦悩の感情を表現した秀品で、聞き応えがあった。
ヴィエルヌは、Kitaraアラカルトのオルガンコンサート(2024年5月5日)でも演奏しており、お気に入りの作曲家のようだ。今回は特に「太陽への讃歌」が、この作品の魅力でもあるオリジナリティ豊かな色彩感をよく表現していて好演。力の抜けた均質なタッチでバランスの良い透き通った響きをここのオルガンから導き出し、これは素晴らしかった。
モーツアルトは、当時のおもちゃのような音楽時計のために書かれた作品にもかかわらず、想像外のスケールの大きさを持った名作であることを示してくれた演奏だった。
そのほかでは、冒頭のバッハは力強く、一方で2曲目のデュリュフレはバッハとは好対照のファンタジックな雰囲気を醸し出していた。
全体的に安定した演奏会だった。
アンコールにルフェビュール=ヴェリの「退堂曲 変ロ長調」。明るく活発な作品で、歯切れ良い快適なテンポによる演奏で聴衆を魅了させた快演。