第24代札幌コンサートホール専属オルガニスト
ウィリアム・フィールディング
デビューリサイタル
2023年9月30日14:00 札幌コンサートホールKitara 大ホール
オルガン/ウィリアム・フィールディング
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ト長調 BWV541
ハウエルズ:3つの詩篇前奏曲 作品32より 第1巻 第2番
モーツァルト:自動オルガンのための幻想曲 ヘ短調 K.608
フランク:3つのコラールより 第1番 ホ長調
デュリュフレ:オルガン組曲 作品5
1999年生まれの英国人。まだ24才だ。パリ国立高等音楽院でオリビエ・ラトリー(今年の「Kitaraのバースデイ」でリサイタル開催)とトマ・オスピタル(今年の武蔵野オルガンコンクールの審査委員で来日)に学んでいる。
バッハはかなり緊張していたようで、アーティキュレーションが曖昧でディテールが不鮮明な箇所もあったが、全体を豊かな響きでスケール感大きくまとめ上げていたのは、このオルガニストの優れた特質のようだ。
イギリスの作曲家、ハウエルズは、初めて聴く作品。ファンタジックで落ち着いた作風の美しい作品で、彼自身のプログラム解説にあった通り、イギリスの田園風景を想起させる演奏だった。
モーツァルトは元来小型の自動オルガンのために書かれた作品だが、しかしその楽想は、明らかにもっと大きな空間での響きをイメージしたもの。そのイメージを見事に再現した演奏で、大オルガンで聴いても全く違和感を感じさせないのは素晴らしかった。現代に甦るモーツァルト演奏で、作曲者の想定以上のスケール感だったかもしれない。
ここまでは、オルガンの響きがややざらついていて、ちょっと気になっていたが、フランクからは良質のいい響きが聴こえてきた。フィールディングも落ち着きを取り戻し、オルガンの響きがホールと馴染んできて、彼のイメージする響きを生み出すことが出来たのではないだろうか。ホール内にたっぷりと豊かなハーモニーが広がり、その中から歌い込まれたメロディーが浮かび上がってくる。
フランクと後半に演奏されたデュリュフレでは、どのストップをどのように組み合わせるかは、楽譜に明確に指定してあり、いわゆるレシピが決まっている作品で、ある程度美しい響きが生まれるのは確約されているはずだが、それにしても、このようにホール内に豊かなオルガンの響きが広がるのを聴くのは滅多に無い経験。フランクの落ち着いた雰囲気の作風がとてもよく表現されていた演奏だった。
デュリュフレは、かなり弾き込んでいる作品で自信があったのだろう、いい響きがしたのは勿論のこと、全体的にゆとりのある演奏でこの作品の魅力を存分に伝えてくれた好演。
プレリュードでは神秘的なこの作曲家独特の世界が、繊細に見事に描かれており、特に16分音符による細かい音型などは遠くに聴こえるが如く立体感を感じさせ、これはとても感性豊かな演奏だった。
シシリエンヌはまろやかで、ハーモニーの移りゆく進行がなかなかきれい。最後のトッカータは技術的にも満足感を与えてくれる力感あふれる演奏で、Kitaraオルガンの醍醐味を充分味わうことが出来た。
アンコールに「ウェストミンスターの鐘」。先日のラトリーと同じアンコール作品となったが、師とは全く違う個性で、フィールディングの流麗な音楽性がよく現れたなかなかいい演奏だった。
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