読売日本交響楽団第666回名曲シリーズ
2023年 10月27日19:00 サントリーホール
指揮/セバスティアン・ヴァイグレ
チェロ/宮田大
プロコフィエフ:交響的協奏曲 ホ短調 作品125
ハチャトゥリアン:バレエ音楽「ガイーヌ」から
“ゴパック” “剣の舞” “アイシャの踊り”
“バラの乙女の踊り” “子守歌” “レズギンカ”
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
プロコフィエフのソロを弾いた宮田が出色の出来。ロストロポーヴィッチのために書かれただけに、チェロのあらゆる技巧が登場する聴かせどころ満載の作品だ。
かなりのテクニックが要求されるが、技術的にも音楽的にもほぼ完璧に手中に収めていて、派手さはないものの、誠実な音楽性が感じられた見事な演奏だった。
第1楽章こそソロもオーケストラもお互いに手探りのところがあったが、第2楽章以降はほぼ完璧。オーケストラとソロの対話も素晴らしく、万全の仕上がりだったのではないか。
ヴァイグレは、オーケストラパートをもっと個性豊かに表現してもいいように感じたが、全体的なバランスがよくソリストを好サポート。
本来はもっと土臭く、野生的な性格を帯びた作品なのかもしれないが、ソロもオーケストラもすっきりと洗練されたモダンでスタイリッシュな演奏で、とても聴きやすかった。
ソリストアンコールに、ラフマニノフのヴォカリーズ。これがよく歌い込まれ、音楽的で音程がとてもきれい。単にピッチがいい、ということではなく、これ以上ないと思われる純正で美しい音程で歌い上げ、抜群のセンスの良さを披露してくれた。
ハチャトリアンは、「剣の舞」以外はなかなか聴く機会の少ない作品が6曲。早めのテンポで颯爽と仕上げた快演で、聴衆にとっては、プロコフィエフとストラヴィンスキーの曲者作曲家に挟まれた清涼剤の役割。
多種多彩な楽器が登場して、視覚的にも楽しめ、かつ音楽の単純明快さがとても心地よい。コンサートピースとしては見事な仕上がりだが、バレエ音楽としては当然速過ぎる演奏だ。せっかくのバレエ音楽特集なので、テンポの変化など、作品ごとの対比をもっと強調した方が面白かったのでは?
ストラヴィンスキーは、オーケストラが絶好調。今日のヴァイグレは、物語を音楽で綴っていく表現ではなく、一気呵成に全曲を演奏していく明るく屈託のない火の鳥。歯切れ良く鮮やかにオーケストラをよく響かせ、団員の優れた音楽的センスを見事に引き出した好演だ。
ただ、演奏にはかなりゆとりがあったので、各曲の性格描写など、もっと時間をかけて丁寧に物語を話して聴かせてくれると、より楽しく鑑賞できたのかもしれない。
読売日本交響楽団を聴いて記憶に残っているのは、定期公演では2019年3月の「グレの歌」(サントリーホール)、2020年には第49回サントリー音楽賞受賞記念コンサートで、2020年10月のメシアン「峡谷から星たちへ」。いずれも忘れ得ぬ名曲と、読響ならではの名演だった。東京では、ほかに東京芸術劇場と新国立劇場で聴いたことがある。
札幌でもKitaraで何度か演奏会を開催しており、在京のオーケストラでは比較的来札機会の多いオーケストラだ。Kitaraで聴いた力強い響きは、今日のコンサートでも、もちろん健在だ。
在京のオーケストラは演奏会場が様々なので、当然その都度響きが異なる。ホールの響きに臨機応変に対応する能力が必要なのだろうが、札幌交響楽団はKitaraで、のように一体どこのホールで聴くと、本当の姿がわかるのか、いつも思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。