2026/10/19


 札幌交響楽団 第680回定期演奏会

 2026年10月18日13:00  札幌コンサートホール Kitara大ホール


指揮:川瀬賢太郎

ピアノ:小曽根 真

管弦楽:札幌交響楽団


細川俊夫/さくらーオーケストラのための

ドビュッシー/3つの交響的素描「海」

小曽根真/ピアノ協奏曲「もがみ」



 細川の作品は、バンベルク交響楽団の委嘱でアンコールピース用として2021年に書かれたもの。初演はコロナ禍のため同楽団のライブ・ストリーミングで行われた。今回が札響初演。

 有名なさくらの旋律に基づく作品で、静かな自然のささやきのように始まり、さくらの旋律が明瞭に聴こえてきた、と思ったら曲が終わる、というわずか5分程度の長さ。細川らしい落ち着いた雰囲気のある作品で、川瀬は繊細にかつ美しくオーケストラの響きをまとめ上げ、好演。もう少し聴きたかった、と思ったが、これがこの作品のねらいの一つか。


 ドビュッシーの「海」は前回、第649回定期演奏会(エリアス・グランディ指揮で、2022年11月27日)で聴いて以来。(ちなみに札響初演は第157回定期演奏会で、岩城宏之指揮、 1976年2月26日、北海道厚生年金会館。手元に当時のプログラムがあり、このときの演奏を聴いているはずだが、残念ながら覚えていない。他に「牧神の午後への前奏曲」とベルリオーズの「イタリアのハロルド」。なかなかいいプログラミングだ。)

 グランディも良かったが、今日はそれに負けない秀演。弦楽器群にディヴィジョンが多く精密に書き込まれた作品のイメージが強いが、ディテールに乱れがなく、細部まで繊細に表現されており申し分ない。

 一方で、今日は管楽器群がとても安定しており、川瀬がオーケストラ全体を柔らかい音色で、バランスのとれたゆとりある演奏にまとめ上げ、安心して聴くことが出来た。


 後半の小曽根のピアノ協奏曲は文句なく楽しめた作品。クラシックのプロ作曲家の多くとは違い、ポピュラリティがあり、一度聴けばすぐ理解できるわかりやすく親しみやすい作風だ。山形県を流れる最上川をテーマにした作品で、色々な作曲家の影響が感じられはするものの、確固としたオリジナリティがある。

 ジャズ畑の演奏家ゆえ、ビックバンド風の管楽器群と打楽器群の扱い方が抜群で、民謡のモティーフをリズミックに効果的に用いるなど、生き生きとした表現がとても印象的。対する弦楽器群の書法も良く考えられており、トータルでオーケストラがとてもきれいに響き聴きやすい。ソロとオーケストラの対話も気の利いたおしゃれな雰囲気がある。

 小曽根のピアノソロは音色がきれいで、心地良い。クラシックを演奏するときの危うさが全くなく、オクターブを重ねて迫力を出すなど華やかさと静寂さのコントラストを明確にした、メリハリのある書法だ。即興的なパッセージが出てくると途端に音楽が生き生きとしてくるなど、ジャズプレイヤーならではの特徴もあって楽しませてくれる。どうすれば聴衆が楽しめるか、を考え抜いた作品だ。

 小曽根のソロも冴えていたが、何よりも川瀬のほぼ完璧なサポートぶりが光る。単調・陳腐にならずに、全体を伸びやかに、見事なアンサンブルでまとめ上げ、文句なく今日の演奏成功の立役者だ。


 アンコールに協奏曲でハモンドオルガンを担当した壺阪健登とピアノ連弾。小曽根の作品だとメッセージがあったが、何処まで楽譜に書かれているかは全くわからない即興的作品。2人の自由で鮮やかな演奏が聴衆を沸かせ、いつもの定期演奏会にはない盛り上がりだった。

 コンサートマスターは会田莉凡。

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