PMF GALAコンサート
2024年7月28日15:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
【第1部】
デュボワ:トッカータ ト短調
オルガン/ウィリアム・フィールディング
(第24代札幌コンサートホール専属オルガニスト)
R. クレリス:序奏とスケルツォ
A. グラズノフ:サクソフォン四重奏曲 作品109 から第2楽章抜粋、第3楽章
ルミエサクソフォンカルテット
住谷美帆(ソプラノ・サクソフォン)
戸村愛美(アルト・サクソフォン)
中嶋紗也(テナー・サクソフォン)
竹田歌穂(バリトン・サクソフォン)
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品76 -4 「日の出」から
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調 作品59 -3
「ラズモフスキー」から
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第6番 ニ短調 作品80 から
クリスティーナ・マクファーソン(コンツェ編):ワルチング・マチルダ
リーザス・カルテット
【第2部】
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K. 482*
マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調
指揮/マンフレート・ホーネック
ピアノ/ティル・フェルナー*
オーケストラ/PMFアメリカ、PMFオーケストラ
マンフレート・ホーネック ©Felix Broede |
マーラーの「交響曲第5番」はPMFオーケストラならではの若いエネルギーがいっぱい詰まった力演。音色は明るく、作曲した時期のマーラーの気力充実度がこれでもかと伝わってくる迫力に満ちた演奏だ。
全体を見事にまとめ上げたホーネックが素晴らしかった。初めて聴く指揮者で、おそらく日本のオーケストラを振ったことがないのでは。
ウィーン・フィルでヴィオラ奏者として活躍したのち、指揮者としてアッバードのアシスタントを務め、その後ヨーロッパとアメリカで活躍をしている。その指揮ぶりからは、豊富なキャリアを積んだとても感性豊かな指揮者のように思える。
概してこの作品では管楽器がうるさくなりがちだが、それ以上に弦楽器をよく響かせ、バランス良くオーケストラ全体の響きをまとめていた。
表情が多彩で、速い楽章での歯切れ良いリズム感、第4楽章のアダージェットでのゆったりとした息の深い歌い方など、実に手慣れており申し分ない。
何よりもアカデミー生の演奏意欲を見事に導き出し、生き生き・伸び伸びと楽しそうに演奏しているのが印象的。彼らのエネルギーが伝わってくる活力ある健康的なマーラーだった。
各楽章とも表情が明確でわかりやすく、対比が鮮やか。例えば、第一楽章の冒頭ソロトランペット。PMFアメリカのクラウスが担当したが、明るく、伸びやかで、葬送行進曲への予告とは思えない演奏。これを聴くと、過去錚々たる巨匠達が指揮する録音で、神経質なまでに弱音で柔らかく歌われたこの箇所が不自然に思えるほどの思い切りの良さだ。
終楽章でのソロホルンもPMFアメリカのベインが担当、屈託のない伸びやかな音色で実に気持ち良さそうに吹いているのが印象的。PMFヨーロッパだったら冒頭のトランペットとここのホルンをこのような音色で響かせることはないだろう、とも思ったが、ともかくこの思い切りの良さは気持ちがいい。
第4楽章のアダージェットは情緒過多になる寸前までよく歌い込み、弦楽器の音色がすっと抜けるように力みがなく自然な音色になるようコントロールしていて、これは常設のオーケストラからもなかなか聴くことのできない名演だった。
今年のアカデミー生はかなり優秀のようで、ホーネックの意図を見事に反映させたその演奏レベルは高く、全体的に今日のように技術的にも音楽的にも揃った演奏は滅多に聴けないだろう。
ただ、その分、執拗に何度も繰り返されるフレーズや、盛り上がってまた元に戻るような起承転結がよく分からないマーラーの書法が丸裸にされていて、ちょっと食傷気味になる箇所もあったが、これはどのような名指揮者でも如何ともし難いようだ。
驚くことに、この熱演の後にアンコールがあって、薔薇の騎士組曲から1曲。これだけ派手な演奏を繰り広げた後に、さらにR・シュトラウスを演奏するエネルギーがあるとはさすが若いオーケストラならではだ。
マーラーでのコンサートマスターはPMFアメリカ演奏会でブラームスの五重奏を演奏したヌリット・バー・ジョゼフ。
ティル・フェルナー ©Fran Kaufmann |
オーケストラを生き生きと表現したホーネックがこれまた実に素晴らしかった。細部まで豊かな表情があって、ピアノとの協奏も見事。協奏曲の醍醐味を味わうことができた演奏だった。
ソリストアンコールにシューベルトの変イ長調の即興曲。さりげないロマン性を匂わせ、これは素敵だった。
ルミエサクソフォンカルテット |
リーザス・カルテットは26日のホームカミング・コンサートでデビュー済み。大ホールで聴くと、とてもバランス良くいい音色で聴こえてくる。ハイドン、ベートヴェン、メンデルスゾーンという王道プログラムでその実力をより発揮し、世界的にも優れた実力派カルテットであることを証明した演奏だった。