PMFホストシティ・オーケストラ演奏会
2024年7月21日 14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/ウィルソン・ウン
ホルン/アンドリュー・ベイン(PMFアメリカ)
管弦楽/札幌交響楽団(PMFホストシティ・オーケストラ)、
PMFオーケストラ・メンバー
細川 俊夫:ホルン協奏曲「開花の時」
チャイコフスキー:交響曲 第6番「悲愴」
細川俊夫の作品が興味深い演奏だった。
今日のホルン奏者、アンドリュー・ベインは
線が太めの明るい音色で、強弱の繊細な表現の幅がよくコントロールされており、安定した表情で好演。
オーケストラでは、客席からはよく見えなかったが、おそらく打楽器には「りん」のような仏具が楽器として使用されていたように思える。それらが奏でる繊細で透明な響きが全体を占めていて、指揮者のウンはいわば東洋的、日本的な繊細さで全体をよくまとめ上げていたようだ。
ただ、ホール全体が蓮の池のような一つの響きに聞こえてくるためには、ステージ上と客席に配置された楽器群の音量バランスが違いすぎるようで、思ったほどの効果的な響きは感じなかった。これは細川の書法と、ホールの違いによるものだろうが、ただしやはり実演で聴くと、当然だが、録音で聴くよりもはるかに魅力的な作品だ。是非、札響で再演を期待したい。
チャイコフスキーは、PMFの学生14名と、PMF期間後半から参加するPMFアメリカの教授陣7名が加わっての演奏で、管楽器のソロのほとんどは教授陣が担当。これらはもちろん素晴らしいが、不思議なものでいつもの札響とは音色、全体的な響きが変わり、違うオーケストラを聴いているようだった。
ウンの指揮は、深く歌い込んだり、自分のペースでオーケストラを強引にドライヴすることもなく、比較的表現が淡白。濃いロマンティシズムなどはあまり感じられず、それよりもオーケストラ自体の自主的表現能力を引き出し、それに委ねるところがあるようだ。
作為的なところがなく、全体的にやや物足りなさがあったにせよ、作品そのものの姿を明確にダイレクトに伝えてくれるので、とてもわかりやすい演奏だったと言える。
ただこの指揮者ならではの個性は感じられず、札響から圧倒的パワーを導き出した他に、どのようにこの作品を演奏したいのか今ひとつ伝わってこなかったのが惜しい。ゲストプレイヤーが加わっての交流演奏会で、それなりに演奏者側は楽しそうだが、音楽的密度がやや薄く聴く側としては物足りなさを感じた。
アンコールに弦楽器だけで、パーセル=ストコフスキー編曲のダイドーのラメント「わたしが地中に横たえられた時」。これも流れに身を任せているようで自然できれいだったが、そもそもが個性的な編曲なのだから、もっと表情豊かに演奏してくれた方が楽しかった。
コンサートマスターは田島高宏。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。