PMFウィーン演奏会
2024年7月12日19:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
PMFウィーン(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー)
ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン I)*
ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン II)
ハインツ・コル(ヴィオラ)**
ペーテル・ソモダリ(チェロ)
ミヒャエル・ブラーデラー(コントラバス)
PMFオーケストラ・メンバー(ブルッフのみ)
エリカ・ハバード (ヴァイオリン Ⅲ)
金山依理 (ヴァイオリン Ⅳ)
グレイシー・マックフォールズ (ヴィオラ Ⅱ)
* 前ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター
** 前ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団奏者
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第15番 変ホ短調 作品144
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品13
ブルッフ:弦楽八重奏曲 変ロ長調(遺作)
とても聞き応えのある演奏だった。室内楽としての音楽的な完成度の高さはやはり比類無きもので、音色の統一、音程の取り方、ハーモニーの作り方、アンサンブルの確実さなど、世界トップクラスのオーケストラで演奏してきた、あるいは演奏している奏者達の奥行きの深さを感じさせた。
その点で、ショスタコーヴィッチは、彼らの長年の豊富な演奏活動が見事に反映された秀演。個々のメンバーの技術的な高さはもちろんだが、それ以上に室内楽に対する鋭敏な感性で見事にまとめ上げらた、しかもこのアンサンブルでなければ聴くことのできない独特の美しさを持つ演奏は実に魅力的だった。
この作曲家が持つ重苦しい時代背景や国籍を強く感じさせない、むしろ音楽的な美しさを追求した美的感覚に優れた演奏だったと言えよう。
晩年のショスタコーヴィッチがこの作品で表現したかった想いは、様々な形に姿を変え、聴衆の一人一人に訴えかけてきたのではないだろうか。
メンデルスゾーンとブルッフはこのアンサンブルの本領発揮というところか。メンデルスゾーンは若き作曲家の颯爽とした瑞々しい感性が見事に表現されており、キュッヒルが大活躍。まだまだ若い感性を失っていないようだ。
珍しいブルッフの八重奏はアカデミー生が加わっての演奏。これはブルッフ晩年の作曲にも関わらず、豊かで明るい感覚に満ちた作品だ。快活で、生命力溢れる歌心に満ちた演奏で、特にこの演奏だけに加わったコントラバスのミヒャエル・ブラーデラーが大活躍。低弦はかなり密集された書法のようで、チェロのペーテル・ソモダリと共にアンサンブルを支えるだけではなく、ソリスティックにも見事な演奏を聴かせてくれた。
アンサンブルリーダーとしてのキュッヒルがさすがの貫禄で、全体をよく統括。来たるPMFオーケストラ演奏会で、コンサートマスターとして加わるようだが、そこでの活躍も期待しよう。
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