PMFオーケストラ演奏会
2024年7月14日14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール
指揮/エリアス・グランディ
ヴァイオリン/クララ=ジュミ・カン*
PMFヨーロッパ(PMFウィーン/PMFベルリン)
PMFオーケストラ
R. シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」 作品20
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品19*
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
冒頭の「ドン・ファン」は10日のオープニング・ナイトでお披露目済み。
コンサートマスターは前回はライナー・キュッヒルだったが、今日はアカデミー生。スケールの大きな枠組みの中で繰り広げられる繊細かつ情熱ある伸びやかな演奏は、前回同様でこれは期待通りの仕上がり。
プロコフィエフのソリスト、クララ=ジュミ・カンは札幌は2回目のようだ。初回は2018年10月の札幌交響楽団第613回定期演奏会で、小泉和裕の指揮でブルッフのヴァイオリン協奏曲 第1番 を演奏している。この定期は残念ながら聴いていない。
今日の演奏は、やや硬質の音色ながらも、プロコフィエフの野生的な逞しさを感じさせるベテランらしい演奏。どちらかというと、落ち着いた雰囲気の持ち主のようで、アカデミー生と共演するのであれば、オーケストラをぐいぐい牽引し、丁々発止と競演するようなソリストの方が刺激があっていいのではないだろうか。
ドビュッシーは素敵なフルートソロと、けだるい暑い夏の日の一日を想起させるオーケストラのよくまとまった表情が印象的な良質の仕上がり。ただ、全体的にやや大味で、各パートがもっとお互い聴き合うような緊張感と繊細さがあるともっと充実した演奏になったのだろう。だが、これは常設のオーケストラでもなかなか難しい課題で、いい演奏に触れる機会はそう多くない。従ってアカデミー生大健闘の演奏だったとも言えるだろう。
ストラヴィンスキーは、ウィーン・フィルとベルリン・フィルの来札メンバーが全員加わっての編成。コンサートマスターはライナー・キュッヒル。
ホルンを除いて、主要なソロは首席に陣取った教授陣が演奏。トッププレイヤーが勢揃いし、札幌以外では聴けない贅沢なオールスターによる編成だ。
従ってソロが上手なのは当然で、結果的にオーケストラ自体もとてもよく弾けていて細部の表情、全体的なスケール感など申し分ない仕上がり。
毎年のことだが、PMF前半を担当したウィーンとベルリンの教授陣はこれで帰国予定なのか、そのサヨナラ公演の意味もあるのだろう。
一方で、この作品で聴かせてくれたアカデミー生のホルンのソロが、柔らかい音色で、とても音楽的で素敵な演奏。それゆえ、教授陣の見事なソロも聞き応えがあるが、せっかくの機会なので、全てとは言わないが、アカデミー生にソロを演奏させる機会をもっと提供してもいいのでは。それを楽しみにしている聴衆も多いのではないだろうか。
「火の鳥」のソロを吹ける機会はそうそうあるものでも無いし、かつソロを中心にしてオーケストラの表情、バランス、全体の響きをどう組み立てていくかなど、取り組むべきオーケストラスタディの課題があるような気がする。
このような背景があるにせよ、グランディの指揮はやはり優れた統率力があり、過去PMF期間前半に登場した歴代客演指揮者の中でも、トップクラスの才能の持ち主だ。今後、札響でどのような活躍を見せてくれるか、楽しみにしよう。
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