PMFホームカミング・コンサート
2024年7月26日15:00 札幌コンサートホールKitara小ホール
リーザス・カルテット
ヘニ・リー(ヴァイオリン/PMF2018)
ジウン・ユー(ヴァイオリン/PMF2019)
メアリー・ウンギョン・チャン(ヴィオラ/PMF2018)
ユギョン・マ (チェロ)
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品76 第4番「日の出」
シェリー・ワシントン:ミドルグランド
シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D. 810「死と乙女」
韓国出身の女性4名で構成するカルテット。チェロを除く3名がPMF卒業生。スケールの大きい大柄な演奏をするカルテットで、大ホールでも申し分ない音量を奏でる。
一方で、チェロが右端で演奏する数少ない例で、そのためバスラインが曖昧にならずにどのような箇所でも聴こえてくるので、安定感がある。
冒頭のハイドンは、冒頭ゆえ、多少のばらつきはあったにせよ、ハイドンの明るい側面が良く表現された、生き生きとした溌剌な演奏。細部までよく仕上げられ、かつ全体の響きのまとめ方が良く練れていて、常設のカルテットならではの優れた演奏だった。
シェリー・ワシントンの「ミドルグランド」はアクティヴで強いエネルギーを感じさせる作品で、このカルテット向きの佳作とも言える。
無窮動の如く持続する音型をカルテットは表現に対する飽くなき挑戦のごとく逞しく演奏していた。この作品に内蔵された生命力を見事に表現し、作品の価値を高めた好演だった。
シューベルトは冒頭から力感あふれるダイナミックな表現で、驚かされた。隙のない常に前向きのアクティヴな演奏は、かつてのアルバンベルク・カルテットを彷彿とさせる。
強弱の対比が実に鮮やかで、どのフレーズにも強い表現意欲とエネルギーが感じられる。力強い演奏でコントラストを明確にした第1楽章と終楽章の両端楽章に挟まれた第2楽章の変奏曲は、それぞれの変奏の性格の違いが明確で、作品を深く掘り下げたよく考えられた演奏だ。全体としては、この世代でなければ表現出来ない情熱的でスケール感のある鮮烈な演奏だった。
実に魅力的なカルテットだが、時には饒舌過ぎて力が入り過ぎ、耳が痛くなるほどの音量になる。ここの小ホールでは、こんなに大きな音とコントラストは必要ないのでは。ホールの大きさに合わせた最適の音量とバランス、かつ柔軟な音楽性で聴かせてくれると、より良い演奏になっただろう。
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