2024/07/02

 札幌交響楽団第662回定期演奏会


2024年6月30日13:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮:尾高忠明(札響名誉音楽監督)

ヴァイオリン:金川真弓


チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲

ドヴォルジャーク/交響曲第9番「新世界より」


 このたび、6月29・30日に札幌コンサートホールKitaraで開催する『第662回定期演奏会』の指揮者 シャルル・デュトワ氏が、体調不良により出演を見合わせることになりました。

 そのため指揮者を尾高忠明(札響名誉音楽監督)に変更して開催することといたします。

 シャルル・デュトワ氏と札響の共演を楽しみされていましたお客様には、誠に申し訳ございませんが、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。

 急な依頼をお引き受け下さった尾高氏に感謝いたしますとともに、デュトワ氏の一日も早い回復をお祈りいたします。(主催者発表)


 シャルル・デュトワが体調不良のため指揮者が尾高忠明に交代。

 ちなみにデュトワはPMF の芸術監督を2000-02年の3シーズン務め、02年にはマルタ・アルゲリッチが登場し、Kitaraで華やかな音楽シーンが繰り広げられたのは、記憶に鮮明に残っている。

 

   最近では新日本フィル第650回定期演奏会〈トリフォニーホールシリーズ〉 (2023年6月24日すみだトリフォニーホール大ホール)を聴くことができた。87歳とは思えないタフな演奏で、札響からどのような音楽を引き出すのか大いに楽しみだったが、次回の登場に期待しよう。 


   金川のチャイコフスキーが良かった。ホール中に朗々と響き渡る骨太の音色で、落ち着いた堂々とした語り口が印象的。前回(2023年3月5日第651回定期)、「プロコフィエフ /ヴァイオリン協奏曲第1番」を偶然にも尾高と共演したときと比べると、作品の雰囲気が違うため一概にはいえないにしても、演奏は一段とスケールが大きくなったように思える。

 ひとフレーズごとにしっかりと聴衆に語りかけてくる説得力のある演奏で、華麗な表現、静かな歌、オーケストラとの対話など申し分なく、巨匠の演奏を聴いているようで、実に見事。尾高はソリストと一体になって全体を引き締まった表現でまとめ上げ、この作品を堪能させてくれた。

 ソリスト・アンコールに「パガニーニの24の奇想曲」より第24番。音色がチャイコフスキーの骨太の音色から繊細な響きにガラリと変化したのには驚愕。各変奏の性格をきめ細やかに表現した素敵な演奏だった。このソリストの多彩な才能に魅了された前半だった。


 尾高・札響の「新世界交響曲」は、ここKitaraで何度も聴いてきたが、定期演奏会で聴くのは初めて。以前はもっと大柄な演奏だったように記憶しているが、今日は細部まで緻密に仕上げられた演奏だ。

 やはり定期での公演となると緊張感が全く違うようで、札響以外のオーケストラ含め、幾多も聴いてきた中でもこれだけ充実した響きのする「新世界より」は今までに聴いたことがない。

 札響に限って言えば、毎年のように何度も聴いたのは、尾高が常任指揮者だったもう20年近くも前の事で、オーケストラの表現力が当時とは比較にならないほど豊かになっているのもその原因の一つだろう。

 部分的にはもっと繊細で美しい表現であれば、と感じたところもあったにせよ、管楽器群の素晴らしいソロと全体的に豊穣な響きでまとめ上げられた演奏は、やはり格別だ。

 ただ、いつも聴き慣れた尾高の音楽で、もちろん安定感があって安心して聴くことができた卓越した演奏だったが、やはりデュトワだったらこの作品をどう表現するのか、聴いてみたかったのが正直な気持ちだ。ぜひ再登場を願う。

 コンサートマスターは会田莉凡。

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