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2025/09/15

 森の響フレンド札幌交響楽団名曲コンサート

~ブラームスとポンマー

 2025年9月13日14:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮 /マックス・ポンマー

管弦楽/札幌交響楽団


C.P.E. バッハ:シンフォニア ニ長調 Wq.183/1

ヘンデル :「水上の音楽」組曲第2番

ブラームス:交響曲第2番


 ポンマー89歳。前回来札は2023年8月。足元が多少おぼつかないものの、プレトークではいつ話し終わるのかと心配させるほど元気な様子を披露、果たして指揮でも年齢を全く感じさせないスケール感ある指揮ぶりで聴衆を安心させた。
 今日は全てニ長調でのちょっと渋めのなかなかいいプログラム。エマニュエル・バッハは札響初演か。こういう一癖も二癖もある個性的な作品を振らせると、本当に上手い。まろやかさがあって、ちょっとした微笑みかける表情など、細かいところまで目配りを忘れず、好演。

 ヘンデルは、これぞバロックと思わせるいかにもヘンデルらしい荘厳さと明晰がある演奏。絶妙なテンポ感と柔軟な感覚が醸し出す全体的雰囲気は日本人指揮者からは聴けない心地良さがある。長年の豊富なキャリアを感じさせ、小編成による歯切れ良さがありながらも、硬さはなくとても聴きやすい、いい演奏だった。


 ブラームスは、アーティキュレーションをクリアに指示し輪郭を明確にしながら、ふくよかに歌い柔和な感覚で全体をまとめ上げた名演。この明快にして柔軟な感覚はポンマーならでは。こういうヨーロッパナイズされた懐の深い演奏は、なかなか聴く機会がない。単に年齢を重ねたベテランだから、と言うことではなく、ありふれた言い方だが、ヨーロッパでの長い歴史と伝統を会得した、感性豊かな指揮者ならではの音楽性が滲み出ている。

 これに対して、オーケストラの反応は今ひとつのところがあり、特に前半では管楽器セクションにやや不調な様子が見えたのは惜しい。こういう指揮にしっかりと応えて、万全な演奏を聴かせてくれると聴衆としてはとても嬉しいのだが。

 と思っていたら、アンコールに第3楽章をもう一度演奏、これがすっきりと力が抜けたとてもまろやかで素敵な演奏。あらためてこのオーケストラの良さに感心した次第。こういう演奏を本番でも聴かせて欲しかった。


 ポンマーは後半になればなるほど次第に元気になってきたようで、是非またの来札を期待したい。

 この9月からフルートの首席に就任したクリス・ウォンはピッチ、音色がきれいで、アンサンブル感覚も申し分ないとてもいい奏者。札響を聴く楽しみがひとつ増えたが、試行期間からずっと聴いてきた印象を言うと、やや音がオーケストラ内にこもりがちで聴衆にメッセージがよく伝わって来ないときがある。まだ遠慮しているのかもしれないが、もっとソリスティックに演奏してもいいのでは。これからの活躍に期待しよう。

 コンサートマスターはポンマーを陰からしっかりと支えていた会田莉凡。

 

2023/09/12

 札幌交響楽団第655回定期演奏会


2023年9月10日13:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮 /マティアス・バーメルト(首席指揮者)

ピアノ /リーズ・ドゥ・ラ・サール


ラヴェル:クープランの墓(管弦楽版)

ファリャ:スペインの庭の夜

フランク:交響曲


    今回は首席指揮者のバーメルトが登場。彼が振ると、オーケストラはまろやかで豊かな音がするし、安定感があるので、聴いていてとても心地よい。

 ラヴェルは12型で、上質のすっきりと抜けてくる音色で統一されており、前回のポンマー(8月26日「札響名曲コンサート」)での剛健な響きとは全く違う響きを聴かせてくれ、その対比が楽しかった。

 冒頭の「プレリュード」では16分音符の軽やかで美しい流れ、以降「フォルラーヌ」のやや気だるい雰囲気、「メヌエット」の柔軟なリズム感など、力の抜けたいい響きが聴こえてきて、とても印象的。フィナーレの「リゴドン」は、なめらかで、柔らかい音色で駆け巡るような躍動感を表現しており、バーメルトならではの上品なラヴェルだった。


 ファリャからは14型。題名のとおり、全てが夜の情景を描いた全3曲からなる。通常の協奏曲と異なり、この作品にはピアニスティックな派手さはないが、リーズ・ドゥ・ラ・サールが各曲の微妙な雰囲気の違いを繊細に、かつやや硬質の響きで表現し、バーメルトが全体を落ち着いた雰囲気でまとめ上げていた。

 もう少し熱い民族的感性を主張した演奏も多いが、今日は作品の背景にあるフランス風の感性で統一した演奏だ。多少地味な印象も受けたが、オーケストラとソロピアノが見事に融和した好演だった。ソリストアンコールにシューベルトの「楽に寄す」。


 フランクは、堂々とした安定感のある演奏。弦と管のバランスは良好。各楽器間での動機の受け渡しも滑らかで、作品の構造もよくわかり、しかも音楽の流れがとても自然。全体的に、オーケストラが無理のない自然な響きを奏で、札響の特質である柔らかく、しかも重厚感のある響きを今日は聴くことができた。 

 作品を構成する動機類には確かにベートーヴェンやワーグナーの強い影響が感じられ、もっと重量感のある響きで表現する指揮者もいるが、本来、フランクはオルガン曲や室内楽作品に見られるように、柔和で敬虔な落ち着いた感性の作風が特徴だ。今日のような柔らかい音色での音楽作りが、フランクの理想に最も相応しいような気がする。

 今日はフランクに限らず、全体的に管楽器群、特に木管楽器群のピッチがとてもきれい。しかも随所で聴くことができた弦楽器、管楽器の女性奏者達による美しいソロが素晴らしかった。


 また、今日は久しぶりにフルートの元首席、高橋聖純が客演首席として登壇。冒頭こそやや違和感を感じさせたものの、以前同様安定感のある美しい音色を聞かせてくれ、その健在ぶりを示してくれたのは嬉しかった。


 バーメルトは前回のポンマーよりは6歳!も年下だ。ゲルマン魂に満ちたポンマーと柔和で垢抜けた雰囲気を創出したバーメルト、両巨匠の演奏をわずか2週間ほどの期間で続けて聴けたのは実に楽しい経験だった。2人の強烈な個性の違いを見事に表現した札響もまた素晴らしかった。

 コンサートマスターは会田莉凡。

2023/08/28

 2023-2024札幌交響楽団名曲コンサート

ポンマーの贈り物 ドイツ三大B


2023年8月26日14:00札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮 /マックス・ポンマー

管弦楽/札幌交響楽団


J. S. バッハ:ブランデンブルク協奏曲第3番

ベートーヴェン:交響曲第8番

ブラームス:交響曲第4番


    ポンマー87才。2019年以来コロナ禍を経て4年ぶりの登場。久しぶりに貫禄十分の音楽を堪能することが出来た。

 バッハは楽譜通り、ヴァイオリンとヴィオラ、チェロが各3人ずつ、ヴィオローネ(コントラバス)が1名とチェンバロ、合計11名の小編成。ポンマーがどこまで指示をしたのかはわからないが、実に生き生きとした躍動感に満ちた演奏。バッハならではの大胆で、かつ一貫した流れが見事に再現されていて、各弦楽器セクションの名技と第2楽章のチェンバロのソロも見事。


 ベートーヴェンの編成は10型の中編成。ポンマーの指示は早めのテンポで、やや強引とも言える牽引振りだ。大枠をしっかり捉えておいて、あとはバッハ同様団員の自発性に委ねるやり方だったようだ。

 第2楽章冒頭の表情記号はピアニッシモの指定。出だしの管楽器群など明らかに大き過ぎ、弦楽器とのバランスも良くないが、スケルツァンドの雰囲気がユーモアたっぷりに表現されていて、これは快演。

 第3楽章のメヌエットでは、中間部でのホルンの溌剌とした二重奏とチェロの明快なソロのアンサンブルが素晴らしく、この箇所がこれほど印象に残った演奏は初めてだ。

 終楽章は、前のめり風の落ち着かない独特の楽想と、どこか垢抜けない雰囲気がよく描かれていて、面白かった。

 全体的にかなり大雑把なところもあったにせよ、何処か古き良き時代の昔話を聴いているよう。ポンマー以外からはけっして聴けない、味のある魅力的な演奏だっだ。


 後半のブラームスは14型の大編成。全体の設定はやはり早めで、丁寧な仕上げをして音楽を整えていく、というよりは、やはりベートーヴェン同様に大きく作品を捉えていくやり方だ。

 第1楽章は全体的にやや粗さを感じさせたが、第2楽章以後がとても良かった。第2楽章冒頭の堂々としたホルンのソロから始まる管楽器グループの豊かな音楽性や、ヴィオラ、チェロの重厚な歌い方、絶え間なく流れる音楽の美しさと全体の統一感は格別。

 第3楽章のアクティヴな躍動感、第4楽章の各変奏ごとの豊かな性格描写、そしてそれらが積み重なってスケールの大きなパッサカリアが構築されていく様子は圧倒的で、これは素晴らしかった。

 響きはちょっと渋めで、いつもの札響トーンではないが、これだけ充実したブラームスを聴くのは本当に久しぶりだ。


 三大Bのプログラムは意外と聴く機会が少なく、貴重な機会。3人ともポリフォニーの名手であることはもちろん、バッハでの単一動機で展開される音楽の見事さ、ベートーヴェン、ブラームスと時代を下るにつれて動機に多様な性格を与えるようになり、ブラームスは更にその動機群に豊かな抒情性を与えて、より表情豊かな世界にした、と三大Bによる音楽史をレクチャーしてくれたようだ。教育的配慮もけっして忘れない。さすがポンマー先生だ。

 6月に東京で聴いたシャルル・デュトワも同じ1936年生まれの87才。おふたりとも元気いっぱいで、素晴らしい。今後のより一層の活躍に期待しよう。

 コンサートマスターは会田莉凡。大活躍だった。


2022/02/27

札幌交響楽団 名曲シリーズ 2021-2022

森の響フレンド札響名曲コンサート

ドイツ3大B

2022年2月26日14:00  札幌コンサートホールkitara大ホール


指揮:尾高忠明

ピアノ:金子三勇士

オルガン:ニコラ・プロカッチーニ


J.S.バッハ/前奏曲とフーガ ト短調 BWV 535(オルガン独奏)

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第4番

ブラームス/交響曲 第2番


「オミクロン株に対する水際措置の強化」に伴う外国人の新規入国停止措置が2月末まで延長となったことにより、2月26日(土)開催の『名曲コンサート~ドイツ3大B』の指揮者をマックス・ポンマーから尾高忠明に変更いたします。(主催者発表)


 

     Kitaraで聴く札響はやはりいい音がする。弦楽器の響きが豊かで、弦と管のバランスがいい。hitaru定期で気になった低弦やティンパニーの響きは、まるで違うオケのようにしっかりといい音で聴こえてきた。

 今日はブラームスが良かった。多分、この作品と尾高の相性はとても良く、いい演奏が期待されるのでは、と予想していた通り。

 Kitaraで長年聴き慣れた、よく歌い込まれた、豊穣で充実した音がする尾高サウンドを久しぶりに堪能。

 この作品を魅力的にしている明るいロマンティシズム、豊かでまろやかな響きがするオーケストレーションなどが、全体的に実に素晴らしく表現されていた。

 第一楽章の前半は弦と管がバラバラで、どうなることやら、と心配だったが、後半から響きがまとまり始め、第2楽章以降は安心して聴くことができた。細かいことを一つだけ言えば、特に、第4楽章の中間部234小節目、マーラーが彼の交響曲第一番でそっくり模倣したのではないか、と思いたくなる箇所から約30小節に及ぶピアニッシモの柔らかい表情の素晴らしさ、そこからフィナーレに至る盛り上がりと解放感の見事さは、尾高ならではの表現。

 管楽器群の独創的な書法もこの交響曲の特徴の一つだが、特に要となるホルンのソロが秀逸。欲を言えば第一楽章での金管群にもう少し柔軟性があれば、と思った。


 ベートーヴェンの協奏曲は、オーケストラの表情が良かった。上質の音色で、節度ある歌い方と、明確で鋭いリズム、ピアノソロとの完璧なアンサンブル、これらはベテラン指揮者の尾高ならでは。ピアノの金子は全体として好演ではあったが、緊張していたのか、前回のリサイタルほどの冴えがなく、音楽の流れに今ひとつ乗り切れなかったのが惜しい。彼ならもっといい演奏が出来るはず。次回に期待しよう。


 当初予定されていたバッハのブランデンブルク協奏曲第3番がオルガンソロに変更。プロカッチー二のバッハは、いつもながらのバランスのとれた大人しいレジストレーション。これからオーケストラを聴く聴衆にとっては、導入としてちょうどいい音量だ。ただ全体的に焦点がやや甘く、もっとクリアなアーティキュレーションや、テーマが重なって音が厚くなっていくオルガンのフーガならではの緊張感がもう少しあると、作品をより楽しめたのではないか。