2023/02/20

森の響フレンド札響名曲シリーズ

アキラさんの名曲コンサート

202321814:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮 /宮川 彬良

構成・プレトーク /新井 鷗子

管弦楽/札幌交響楽団


宮川彬良:風のオリヴァストロ

ブルグミュラー:貴婦人の乗馬、アラベスク

ショパン:別れの曲

ハノン:バリエーション・ハノン第1番

H.マンシーニ:ひまわり

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

モーツァルト:アイネ・クライネ・タンゴムジーク

ベートーヴェン:エリーゼのために

ジョプリン:ジ・エンターテイナー


バーンスタイン:「ウエストサイド・ストーリー」より

          アメリカ、マリア     

        シンフォニック・ダンス

ベートーヴェン=プラード:シンフォニック・マンボNo.5


 宮川彬良と札響は2006年からシリーズで、主にファミリー向けの気軽なコンサートを開催している。毎回盛況で、今日も満席。定期公演とは客層が違い、親子連れや夫婦での来場者が多く、場内はカジュアルな雰囲気でいっぱいだ。

 宮川はもちろん優れた作曲家、編曲者だが、同時に優れたエンターテイナーでもあり、ユーモアにあふれた、わかりやすい良質のお話が人気の原因の一つだろう。

 それゆえ、これを楽しみにしている観客も多いようで、場内はさながら贔屓の落語家が登場したかのような盛り上がりだ。

 

 オリジナルの作品はシンフォニック・ダンスだけで、あとは、宮川彬良の編曲。いずれも手慣れた、いい響きがする優れた編曲だ。

 特に前半では、宮川のピアノソロが加わり、これが編曲に素晴らしい彩りを添えており、実に見事。また、ピアノの音色がとてもきれいで、楽器の状態がとても良かったのは特筆すべき事柄だろう。


 今日のテーマは「音楽をもっと知りたい人のためのアキラ流アナリーゼ」。前半ではブルグミュラーの「貴婦人の乗馬」が見事な編曲。最後にトランペットの鶴田が、馬のいななきを表現するなど、演出効果も万全で、宮川の面目躍如というところか。

 その他では、「エリーゼのために」が編曲とはいえ、全曲演奏されていた。ベートーヴェンになると、さすがに編曲にも力が入るのか、重量感があり、聞き応えがあった。

 それ以外の作品では、美しい旋律だけを取り上げて終わるような、ダイジェスト版が多く、やや物足りないところもあったのが残念。名曲は美しい旋律だけではない、というところも紹介して欲しい。

 モーツァルトとマンシーニの作曲技法の共通性など、面白い話題満載だったが、どうせなら、もっと突っ込んだお話をしても良かったのでは。


 後半は宮川の「ウエストサイド・ストーリー」への熱い思いを語りながらの演奏。物語のメインテーマである、対立する二つの勢力を、作曲技法上から見事に解明した説明は、わかりやすかった。大きな楽譜をステージ上で用いて説明してくれたが、おそらく1階席前方の聴衆しか見えなかったのではないか。楽譜がなくても、宮川の説明と凡例のピアノ演奏で充分伝わったと思う。

 さらに、ここで宮川のお話は、ウエストサイド・ストーリーの内容と、今の世界情勢を匂わせながら、音楽の素晴らしさを語っていく、気配りのあるなかなか味わい深いお話で、これは普通の音楽家ではなかなか出来ないことだ。

 色々な宮川の想いを込めたシンフォニックダンスの演奏は、この日ならではの特別な響きがしていたのかもしれないが、ただ、前半も後半も伝えたいメッセージがたくさんあり過ぎて、やや時間オーバーだったようだ。もう少し曲目を減らして,焦点を絞ったお話をすれば、聴衆にとって、もっと知りたい情報が伝わったのではないか。


 コンサートマスター、会田莉凡が、要所要所をしっかり締めていたようで、アンサンブルの乱れもなく、いつもの札響サウンドが聴こえてきて、いい演奏だった。これは宮川のとの信頼関係が築かれていることもあるのだろうが、札響の地力が安定してきた証拠でもあろう。


 アンコール(マツケンサンバ)と、今日が誕生日だった宮川を祝うセレモニー含め、終演は16時20分を少し越えた頃。セレモニーがあったのでちょっと長くなったが、聴衆は皆満足して帰路についたようだ。

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