2023/02/06


札幌交響楽団 650回定期演奏会

20232 513:00  札幌コンサートホール Kitara大ホール


指揮 / マティアス・バーメルト

フルート /カール=ハインツ・シュッツ

ハープ /吉野 直子


武満 雨ぞふる

モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲

シューベルト:交響曲「ザ・グレイト」


 バーメルトと武満とは交流があったそう
だ。1982年の作品なので、武満の短い生涯からすると、後期に属するのかもしれない。

 武満らしい静かで瞑想的な雰囲気の作品だ

、どこか世界全体を見渡した普遍性のようなものが感じられた演奏で、彼らしい強い個性が隠れてしまっていたようにも思われたが、それが武満のこの作品に込めた意図だったのかもしれない。澄んだ、とてもいい響きが印象的で、これは、武満の思い描いた通りの響きだったような気がする。


 モーツァルトは、ソリスト2人に対して、もうこれ以上望むことはない、と思わせた名演で、今回の定期を聴いた聴衆は、幸運で贅沢な思いが出来たとも言える。

 フルートのシュッツは、余計なヴィブラートがなく、力が抜けて、笛そのものの自然で透明な、実に美しい音色がすっきりと聴こえてきて、しかもその表現には作為的なところが全くない。これは他の誰からも聴くことのできない素晴らしいソロだった。ピッチもとてもきれい。

 吉野のハープは安定感があり、楽器の魅力である華やかさと繊細さが行き交う微妙なニュアンスが素敵で、しかも響きがフワッと虹のように全体的に広がり、オーケストラと調和していくところはさすがだ。

 当然のことながら、2人の息のあったアンサンブルは申し分ない。よく演奏される作品だが、これだけソリストが2人とも音楽的に、鮮やかに揃った演奏は初めてだ。特に第2楽章が出色の出来だった。

 バーメルトの指揮は柔らかく、まろやかにオーケストラをまとめており、この響き、音色は彼ならではのもの。ソリストとオーケストラはいつもより多少奥のポジションだったが、響きにまとまりがあり、いい音がしていた。個人的には好きなポジションだ。

 ソリストアンコールに2人でイベールの間奏曲。


 後半のシューベルトは、程良いテンポと落ち着いた表現、管楽器と弦楽器が融和して一体となった、充実した響きが実に心地良く、骨格をしっかりと示し全体をまとめ上げて、この交響曲の本来あるべき姿を聴かせてくれた名演。

 ロマンティック過ぎずに、中庸の表情での演奏で、時としてやや無骨なところや、もう少し歌い込んだ陰影のある表情も聴きたい、と思ったところもあったが、曖昧さが一切なく、極めてクリアに全体像を描いており、シューベルトがこの交響曲に込めた思いを見事に示してくれた。

 余計な演出がない分、楽想の繰り返しが多い作品そのものの長さが気にはなったが、なかなかこのような重心の低い安定した演奏に触れる機会は少ないだろう。同じプログラムで東京公演を予定(9日19:00、サントリーホール)。


 定期では珍しくアンコールにシューベルトの「ロザムンデ」バレエ音楽1番より。

 コンサートマスターは会田莉凡。


 今日は武満の後に大きなステージ転換が行われたが、いつも登場していたステージ・マネージャーの田中正樹氏が2月日に永眠された。

 誠実で緻密な仕事ぶりと、演奏家や周囲の人々に対する細かい気配りは素晴らしかった。いつもダンディで、笑顔を絶やさず周囲を和ませてくれた。今日のモーツァルトの第2楽章を聴きながら、彼の素敵な笑顔を思い出していた。ご冥福をお祈りします。

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