2023/02/11

 タンホイザー

20232817:00 新国立劇場オペラパレス


 揮/アレホ・ペレス

 出/ハンス=ペーター・レーマン

美術・衣裳/オラフ・ツォンベック

 明/立田雄士

 付/メメット・バルカン

再演演出/澤田康子

舞台監督/髙橋尚史


領主ヘルマン/妻屋秀和

タンホイザー/ステファン・グールド

ヴォルフラム/デイヴィッド・スタウト

ヴァルター/鈴木 

ビーテロルフ/青山 

ハインリヒ/今尾 

ラインマル/後藤春馬

エリーザベト/サビーナ・ツヴィラク

ヴェーヌス/エグレ・シドラウスカイテ

牧童/前川依子

4人の小姓/和田しほり/込山由貴子/花房英里子/長澤美希

合唱指揮/三澤洋史

 唱/新国立劇場合唱団

バレエ/東京シティ・バレエ団

管弦楽/東京交響楽団


 レーマンのプロジェクトは20071319年に引き続き4回目の再演。回とも指揮者は違い、今回はアレホ・ペレス。

 今日聴いた4階席2列目中央では、響きが全体的にまとまって、かなり豊かに聴こえてくる。しかもステージの全容がほぼ見渡すことができ、ワーグナーの醍醐味である力感のある雰囲気が伝わってきて、なかなか楽しめた公演だった。

 ちなみに、この4階席、もう少し上になると舞台の一部が視野から欠けるため、再演を見るには良いが、プレミエはちょっときつそうだ。


 ペレスの指揮はワーグナーというよりは、ロマンティックで、イタリアオペラを聴くような表現も多く、かなりソフトな語り口のワーグナーだ。一方で全体的に中庸過ぎて、やや停滞した印象を受けたのも事実で、硬派なワーグナーファンからは嫌われそうだ。


 歌手ではグールドのタンホイザーがさすがの出来。疲れを知らぬスケールの大きい、表現力豊かな歌で、圧巻だった。2015年からの新国立劇場リングにも全て出演しており、その時よりもさらにパワーは増しているような気がする。日本人からはなかなか聴くことのできないエネルギッシュで素晴らしい歌だ。

 ツヴィラクのエリーザベトは全体的にやや性格がはっきりしないところがあって、ちょっと残念。シドラウスカイテのヴェーヌスは、声量もあり、ドラマティックな表現力のある歌で、楽しめた。

 日本勢では妻屋の領主へルマンが役柄に相応しい堂々とした貫禄と奥深さを感じさせる名演でさすが。この人は善良な役柄がとても良く、悪役は似合わない。その他では牧童の前川が好演。


 合唱は迫力があって、輪郭がとてもはっきりしており、素晴らしかった。指揮は三澤。やはり彼の指揮だとかなりメリハリのある力強い面がよく表現されるようだ。

 バレエは新国立劇場ではなく、東京シティ・バレエ団。階から観ると、見事に揃った素晴らしいバレエだが、このような振り付けは、あまり日本人ダンサーには向いていないようだ。


 舞台はそれなりに豪華さがあって、時代を想定した雰囲気がよく出ていて良かった。歌合戦のシーンなど華やかさがあっていい。背広姿や、ジーンズ姿の男達がいないので、より想像力豊かに鑑賞できるのはやはり楽しい。観る機会の少ない者にとって、オペラはこうでなくては。


 オーケストラは東京交響楽団。序曲では管楽器の調子が今ひとつ乗り切らず、成り行きが心配ではあったが、大健闘していたのでは。ただ、エネルギーが常に全開で、本音を言えば、ワーグナーではもう少しゆとりのあるオーケストラで聴きたかった。


 ところで、新国立劇場のHPで、「サロメ」の札幌公演(札幌文化芸術劇場、2023年6月11・13日)が決定したとのお知らせが発表になっていた。札幌でも新国立劇場のプロジェクトの上演機会が増えるのはいいことだ。楽しみにしておこう。

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