第25回リスト音楽院セミナー
特別レクチャー&公開レッスン
2023年2月25日10:30 札幌コンサートホールKitara小ホール
講師/バラージュ・レーティ(リスト音楽院教授)
通訳/谷本聡子(札幌大谷大学教授)
【特別レクチャー】
テーマ/バルトーク〜ミクロコスモス
【公開レッスン/ピアノ】
受講生/萩原 るうか(札幌大谷大学 3年)
リスト:超絶技巧練習曲 より第11番 変ニ長調
受講生/遠山 寧音 (北海道教育大学岩見沢校 4年)
バルトーク:戸外にて
ミクロコスモスは、言うまでもなく、バルトークが自分の息子のために書いた全6巻のピアノ教材。各巻から何曲か特徴的な作品を取り上げ、意義と目的、その価値を、実演を交えて説明。
手慣れた見事な演奏、的確な説明とわかりやすい通訳で、一般の音楽ファンにも楽しめる内容だった。
今日のレクチャーからは、初歩から始まり次第に難易度が高くなること、各曲が子供にとって取り組み易い短い作品であること、いかに少ない音で多くを語るかという方針が徹底していること、初期の段階から両手は独立した動きをするようになっていること、様々な音楽のスタイルのエッセンスが盛り込まれており、例えばベートーヴェンの作品を鑑賞したときに、その様式が理解できるような、ヒントが盛り込まれていること、など。
第6巻はコンサートピースとして活用でき、バルトークの趣味は昆虫採集で、あちこちハエが飛び回るシーンを描いたユーモラスな作品(第6巻No.142,「from the Diary of a Fly」日本語訳「蝿の日記から」)があること、これは実演付きで、本当にハエが飛んでいるような見事な演奏だった。
その他、メロディーと伴奏という単純形がなく、調性にとらわれない、自由で伸び伸びとした感覚の、子供が興味を持ちそうな作品が多い。
民俗音楽をテーマにした作品も多く、誰か優れた日本の作曲家がこのような作品集を書けないものだろうか?
公開レッスンは札幌大谷大学と北海道教育大学岩見沢校から各一人ずつ受講。2人ともとてもよく弾けている。
レッスンは、もちろんプロの教育者だけあって、的確で、模範演奏はとても音楽的。バルトークの、無機的になりがちなパッセージでも歌を感じさせる演奏で、セミナー期間中の教授陣のレッスンを聴いても、この音楽性、特に歌うことに焦点を当てた指導、指摘がかなり多いのが特徴だ。
リストのレッスン曲説明で、リストとドビュッシーの関連性については興味深く、また2人がローマで面会した事実があることは知らなかった。(Alan Walker 「Liszt , The Final Years 1861-1886」によると1886年
1月に面会している。リスト最後の年で、これについては有名な逸話があるようだ。色々な文献で紹介されているようで、これは当方の不案内。なお、グローブ音楽事典の日本版では1885年となっている。)
この公開レッスンは,当初Kitaraで開催、その後札幌大谷大学の協力を得て、同大学に会場を移したが、前回(コロナ禍でオンライン開催)から再びKitaraに会場を戻した。
一般市民の来場も増えてきたようで、セミナーが専門家以外により浸透していくきっかけになることを期待している。
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