札幌交響楽団 東京公演2023
2023年2月 9日19:00 サントリーホール
指揮 /マティアス・バーメルト
フルート /カール=ハインツ・シュッツ
ハープ /吉野 直子
武満 徹:雨ぞふる
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
シューベルト:交響曲「ザ・グレイト」
プログラムは全て札幌で開催された2月4・5日の第650回定期公演と同じ。
今回聴いたサントリーホールでの席は、2階C席9列のやや上手より。2階席では、Kitaraのようにふくよかに響きが広がるのではなく、比較的ステージ上で響いている音がまとまって、余計な残響を加えることなく、ほぼストレートに伝わってくる。
ホールの響きが演奏をより豊かにしてくれることはなく、ステージ上で起こっていることを、ほぼそのまま伝えてくれる。つまり、ステージに立つ演奏者の実力がそのまま伝わってくるシビアなホールとも言える。かと言って、残響が少ないわけではなく、適度でバランスの良い残響で、これは改装後、前よりも良くなった気がする。
ここのホールが世界のトップアーティスト達を魅了し続けた理由の一つはここにあるのかもしれない。
さて、以上のような印象を受けた今回の演奏について。
武満は今回の方が、全体的により緻密。アンサンブルの精度は高く、響きがより磨き上げられ、この作品に秘められた武満の豊かな感性と世界観が見事に表現されていたと思う。
モーツァルトは、両ソリストの鋭い感性や、歯切れのよいリズム感がより明確に伝わってきて、特にフルートのシュッツが思いがけずアクティブな演奏を聴かせ、これは存分に楽しめた。個人的には札幌での落ち着いた、気品のある演奏の方が好きだったが。
バーメルトの指揮も活気があり、ソリストとの一体感がより強く感じられた演奏だった。
ソリストアンコールに2人で、イベール/間奏曲。札幌では寡黙だったシュッツが、日本語で演奏作品を紹介。
シューベルトはこの作品のスケールの大きさが存分に伝わってきた名演。全体的に響きが引き締まっており、特に後半の2つの楽章では、隙なく前に進んでいく活力と、充実した底力のある響きがとても心地よかった。バーメルトも元気いっぱいで、輪郭がよりはっきり聴こえてきて、推進力のある押しの強い演奏だった。
ここのホールは、管楽器がよりはっきり聴こえ、Kitaraだと響きに溶け込まれて聴こえてこない、些細なミスまでクリアに聴こえてきたり、と中々シビアだ。
第2楽章ではオーボエが大活躍だったが、この楽章終了後、2階席C7列下手寄り付近の席から、大声をだして拍手をする迷惑な輩がおり、せっかくの素晴らしい演奏の後の余韻が台無しに。
アンコールにシューベルト/「ロザムンデ」バレエ音楽1番より。
来場者が札幌より多く、客席は全体的に程よく埋まっていたようだ。終演後の聴衆同士の会話を盗み聞くと、素晴らしいじゃない、うまいオケだな、という感想が幾つか。多くの来場者は満足して、寒い中帰路に着いたのではないだろうか。
過去に何度か、札幌の定期公演と東京公演のセットを聴いたことがあるが、東京公演は演奏者がより張り切るのか、札幌よりアクティブな演奏のことが多い。
2011年だったと思うが、この時の東京公演も演奏者がとても張り切っていて、名演を聴かせてくれた。ミクローシュ・ペレーニがソリストで、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第2番を演奏、札幌の時と全く変わらずに、というか彼はいつも変わらずに淡々と演奏するが、しかし熱い音楽を奏でていたのは、懐かしい思い出だ。
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