ミクローシュ・ペレーニチェロリサイタル
2024年2月21日19:00 札幌コンサートホールKitara小ホール
チェロ/ミクローシュ・ペレーニ
ピアノ/バラージュ・レーティ
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 二短調 BWV1008
ダラピッコラ:シャコンヌ、間奏曲とアダージョ
フォーレ:ピアノとチェロのためのソナタ 第1番 ニ短調 作品109
エルド:ベートーヴェンへのオマージュ
〜チェロ独奏のための狂詩曲〜 作品24
ドホナーニ:チェロ・ソナタ 変ロ長調 作品8
冒頭のバッハは、ペレーニの円熟した、柔らかく、暖かい音楽で聴衆を包み込んでくれた名演。バランス感覚の優れた実に素晴らしいバッハだ。
深く歌い込み、全ての音域で、むらなく美しく整った音色、柔軟で自在なボーイング、見事な調性感による美しい音程、作為的なところが一切ない自然な抑揚による表情、それらが統合されて生まれてくる見事な均整感のあるバッハは他の誰からも聴くことのできないものだ。
続くダラピッコラは、作曲者の第2次世界大戦当時の暗い影を背負った感情とそれが浄化されていく流れを見事に表現。20世紀音楽も得意としているペレーニならではの、その時代と作品に即した多彩な表現能力の素晴らしさを示してくれた。
ここまで無伴奏で、続くフォーレのピアノは今回が実質的な札幌デビューとなるバラージュ・レーティ。2020年からリスト音楽院セミナー講師として参加しており、演奏を披露するのは今回初めて。
音楽的にも技術的にも伴奏者としては申し分なく、ペレーニと一体となって音楽を構築していく様子は素晴らしい。さりげなく演奏しているようで、実際は響き、音量が見事にコントロールされていて、演奏全体に統一感がある優れたピアニストだ。フォーレらしい途切れない美しい流れと、節度ある歌い方のチェロによるデュオは見事だった。
珍しいエルドは、この作曲家の機知に富む作風の一端を示してくれた気の利いた演奏。他の作品を聴いてみたくなる演奏だ。
最後に演奏されたドホナーニは、ピアノパートが重量感のあるヴィルトゥオーゾタイプの書法だが、レーティはかなり音量をコントロールして、ペレーニのチェロを最大限に活かすことを考慮しての演奏。
もう少し自己主張してもいい箇所も多々あり、個人的には前半のフォーレでの音量バランスの方がより一体感があって好きだが、この見事なコントロールのおかげで、チェロのソロは全て聴こえてきた。
ペレーニはともすれば饒舌になりがちなこの若さあふれる作品を、品よく落ち着いた奥行きの深い演奏で聴かせてくれた。作品の価値をより高める優れたデュオによる演奏だったと言える。
アンコールが2曲あって、ドホナーニの「ハンガリー牧歌」からと、バッハの無伴奏チェロ組曲の第3番から前奏曲。バッハが心の琴線に触れるような演奏。世界第一級の名演奏を聴けた幸福な一晩だった。
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