第 26 回 リスト音楽院セミナー
受講生コンサート
2024 年 2 月 25 日15:30 札幌コンサートホール Kitara小ホール
セミナー締めくくりの受講生コンサート。各コースの教授からの推薦で出演者を決定し、コンサートで最優秀受講生を選抜。翌年のブダペスト・スプリング・フェスティヴァル2025への出演資格が授与される。
今回の受講生コンサートは例年になく全体的に高水準。若々しい溌剌とした演奏はもちろんだが、個性豊かな演奏が多くなったのは新しい傾向なのかもしれない。
以下、特に記載のないのは大学在学中か、卒業した出演者。
1. 古川 佳奈
J.S.バッハ: 平均律クラヴィーア曲集 第 1 巻より
第 22 番 変ロ短調 BWV867
古川佳奈は第24回リスト音楽院セミナーの最優秀受講生で、昨年4月にブダペスト・スプリング・フェスティヴァルでリサイタルを開催している。また昨年の受講生コンサートでシューマンの「クライスレリアーナ」の素晴らしい演奏を披露。
今回はバッハで、作品の深い宗教的雰囲気を丁寧に深く歌い込み、仕上げた演奏。音がきれいで、フーガの各声部の歌い方と立体感は素晴らしかった。
2. 土肥 慶
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第 4 番 変ホ長調 作品 7 より 第 1 楽章
多少荒削りだが、骨組みのしっかりした明確な演奏。音楽的に難しい作品をよくまとめ上げていた演奏。
3. 後藤 Amy(ピアノ横山瑠佳)
ベートーヴェン: チェロ・ソナタ 第 3 番 イ長調 作品 69 より 第 1 楽章
音色、音程がきれいで、しなやかな表現が印象に残った演奏。横山のピアノが安定しており、アンサンブルとしても良質。
4. 渡辺 彩乃
リスト: バラード 第 2番 ロ短調 S.171
表現力豊かなリスト。全体的にとても安定して落ち着いており、細部まで丁寧に仕上げていた感性豊かな演奏。安心して聴くことができた。
5. 藤原 寛太 (ピアノ横山瑠佳)
ブラームス: チェロ・ソナタ 第 2 番 ヘ長調 作品 99 より 第 1 楽章
藤原は高校生。表情豊かなブラームス。ピアニストが雄弁で、全体的にとてもしっかりしたアンサンブルで、スケール感を感じさせた好演。
6. 伊藤 大晴
ショパン: ロンド 変ホ長調 作品 16
明るく伸び伸びとした演奏。弾むようなリズム感、軽快なパッセージなど、この時期、この年齢の時にしか表現し得ない若々しいショパンで、とても楽しく聴くことができた。
7. 加藤 七海
スクリャービン: 幻想曲 ロ短調 作品 28
意外に聴く機会の少ない作品。全体をハーモニックに豊かに響かせ大きくまとめ上げた演奏で、今回は貴重な鑑賞機会だった。
8. 西田 翔
リゲティ: 無伴奏チェロ・ソナタ
よく歌い込み、作品の古典的な要素がよく表現された演奏。伝わってくるメッセージがとてもわかりやすく、好演だった。
9. 荒川 浩毅
スクリャービン: ピアノ・ソナタ 第 7 番 「白ミサ」 作品 64
作品の持つ神秘的な感覚をダイレクトに思い切った表現で演奏した好演。メシアンを想起させる瞬間もあって、いまだに作品の新しさを感じさせた。楽器もとてもよく響いていた。
10. 小野寺 拓真(第25回リスト音楽院セミナー最優秀受講生)
ショパン: ピアノ・ソナタ 第 3 番 ロ短調 作品 58
高校生。2024年5月12日にハンガリー、ブダペストのリスト音楽院ショルティホールでリサイタルを開催予定。このショパンはこのリサイタルで演奏予定。よく弾き込んであり、見事な安定度。この世代としては申し分ない表現力だ。リサイタルの成功を期待しよう。
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