札幌交響楽団hitaruシリーズ定期演奏会第16回
2024年2月8日19:00 札幌文化芸術劇場hitaru
指揮/広上淳一
ピアノ/伊藤 恵
管弦楽/札幌交響楽団
伊福部昭:土俗的三連画
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
伊福部は、14の楽器による室内オーケストラ編成で、配置がいつもと違うため、今日の席(一階22列下手側)では耳が慣れるまでちょっと時間がかかった。冒頭からやや田舎くさい響きが聴こえてきたのは、伊福部の狙いとおりだったのかも知れないが、中央に配置されたピアノの響きがその土俗的な響きを中和し、西欧風のモダンな雰囲気を呼び戻す役割を果たしているようで、この微妙な違和感がこの作品の魅力なのかも知れない。広上の指揮は、このアンバランスでローカリティあふれる土俗風雰囲気と、伊福部ならではのバイタリティあるエネルギーを誠実に表現していたのではないだろうか。
伊藤恵のモーツァルトは、細部まで歌があって、例えば16分音符が上下するパッセージでもしなやかで柔らかく、品のある歌が聴こえてきて心地よい。左手のベースはもっとどっしり響かせる人もいるが、いつもコントロールされた深い音色で響かせるため、威圧感がない。時としてクリアさでは不満を感じさせるものの、とても豊かな音楽性が感じられ、こんなに親しみやすく、温かいモーツァルトは久しぶりだ。オーケストラととても美しく融合した響きを聴かせてくれて、この一体感はこの人ならではの素晴らしさだ。
オーケストラは12型で、広上の指揮は手慣れたベテランの仕事ぶり。多少リハーサル不足を感じさせる荒さもあったが、この作品らしいデモーニッシュな表情も聴かせてくれるなど、聞き応えがあった。
広上の田園は、いかにも彼らしい屈託のない表現だ。弦の表情は明るく伸びやかで、晴々とした田園風景が目に浮かぶ。今年は豊作だ、とでも言いたくなるような世界だ。14型に編成を大きくしての演奏で、弦楽器群の響きがより豊かになり、札響ならではの弦の美しさを堪能させてくれた。
時として管楽器の響きが消されるシーンもあり、このバランスにもう少し配慮が欲しかったのと、例えば第3楽章のヴァイオリンのアーティキュレーションがちょっと曖昧になるなど、大雑把な箇所もあったにせよ、寒さを忘れさせてくれる豊穣な田園だった。
今日はフルート首席がゲスト。やや遠慮気味にも聴こえたが、中々奥行きのあるいい演奏。ただ、フルートの首席はやはりオーケストラの要だ。早く決まると、管楽器グループの表情はより安定感を増すのではないか。
コンサートマスターは田島高宏。
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