2023/02/20

森の響フレンド札響名曲シリーズ

アキラさんの名曲コンサート

202321814:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮 /宮川 彬良

構成・プレトーク /新井 鷗子

管弦楽/札幌交響楽団


宮川彬良:風のオリヴァストロ

ブルグミュラー:貴婦人の乗馬、アラベスク

ショパン:別れの曲

ハノン:バリエーション・ハノン第1番

H.マンシーニ:ひまわり

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

モーツァルト:アイネ・クライネ・タンゴムジーク

ベートーヴェン:エリーゼのために

ジョプリン:ジ・エンターテイナー


バーンスタイン:「ウエストサイド・ストーリー」より

          アメリカ、マリア     

        シンフォニック・ダンス

ベートーヴェン=プラード:シンフォニック・マンボNo.5


 宮川彬良と札響は2006年からシリーズで、主にファミリー向けの気軽なコンサートを開催している。毎回盛況で、今日も満席。定期公演とは客層が違い、親子連れや夫婦での来場者が多く、場内はカジュアルな雰囲気でいっぱいだ。

 宮川はもちろん優れた作曲家、編曲者だが、同時に優れたエンターテイナーでもあり、ユーモアにあふれた、わかりやすい良質のお話が人気の原因の一つだろう。

 それゆえ、これを楽しみにしている観客も多いようで、場内はさながら贔屓の落語家が登場したかのような盛り上がりだ。

 

 オリジナルの作品はシンフォニック・ダンスだけで、あとは、宮川彬良の編曲。いずれも手慣れた、いい響きがする優れた編曲だ。

 特に前半では、宮川のピアノソロが加わり、これが編曲に素晴らしい彩りを添えており、実に見事。また、ピアノの音色がとてもきれいで、楽器の状態がとても良かったのは特筆すべき事柄だろう。


 今日のテーマは「音楽をもっと知りたい人のためのアキラ流アナリーゼ」。前半ではブルグミュラーの「貴婦人の乗馬」が見事な編曲。最後にトランペットの鶴田が、馬のいななきを表現するなど、演出効果も万全で、宮川の面目躍如というところか。

 その他では、「エリーゼのために」が編曲とはいえ、全曲演奏されていた。ベートーヴェンになると、さすがに編曲にも力が入るのか、重量感があり、聞き応えがあった。

 それ以外の作品では、美しい旋律だけを取り上げて終わるような、ダイジェスト版が多く、やや物足りないところもあったのが残念。名曲は美しい旋律だけではない、というところも紹介して欲しい。

 モーツァルトとマンシーニの作曲技法の共通性など、面白い話題満載だったが、どうせなら、もっと突っ込んだお話をしても良かったのでは。


 後半は宮川の「ウエストサイド・ストーリー」への熱い思いを語りながらの演奏。物語のメインテーマである、対立する二つの勢力を、作曲技法上から見事に解明した説明は、わかりやすかった。大きな楽譜をステージ上で用いて説明してくれたが、おそらく1階席前方の聴衆しか見えなかったのではないか。楽譜がなくても、宮川の説明と凡例のピアノ演奏で充分伝わったと思う。

 さらに、ここで宮川のお話は、ウエストサイド・ストーリーの内容と、今の世界情勢を匂わせながら、音楽の素晴らしさを語っていく、気配りのあるなかなか味わい深いお話で、これは普通の音楽家ではなかなか出来ないことだ。

 色々な宮川の想いを込めたシンフォニックダンスの演奏は、この日ならではの特別な響きがしていたのかもしれないが、ただ、前半も後半も伝えたいメッセージがたくさんあり過ぎて、やや時間オーバーだったようだ。もう少し曲目を減らして,焦点を絞ったお話をすれば、聴衆にとって、もっと知りたい情報が伝わったのではないか。


 コンサートマスター、会田莉凡が、要所要所をしっかり締めていたようで、アンサンブルの乱れもなく、いつもの札響サウンドが聴こえてきて、いい演奏だった。これは宮川のとの信頼関係が築かれていることもあるのだろうが、札響の地力が安定してきた証拠でもあろう。


 アンコール(マツケンサンバ)と、今日が誕生日だった宮川を祝うセレモニー含め、終演は16時20分を少し越えた頃。セレモニーがあったのでちょっと長くなったが、聴衆は皆満足して帰路についたようだ。

2023/02/14

 オルガンウィンターコンサート


2023年2月1115:30 札幌コンサートホールKitara大ホール


オルガン/松居直美


ブクステフーデ:プレルディウム ト短調 BuxWV149

                                暁の星のいと美しかな BuxWV223

シューマン:ペダル・ピアノのための練習曲集 作品56より

      第2番イ短調

      第4番変イ長調

J.S.バッハ:わが魂は主をあがめ

       マニフィカトによるフーガ オルガノ・プレノのための

                            BWV733 

      さまざまな手法による18のライプツィヒ・コラール集より

       いと高きところには神にのみ栄光あれ BWV662

      パッサカリア ハ短調 BWV582



 第23代専属オルガニスト、ヤニス・デュボワが健康上の理由で一時帰国中のため、代役に松居直美が、Kitara主催コンサートには初登場。日本のオルガニストの中では、もうベテランの域に入る重鎮だ。

 ビジターのオルガニストが、Kitaraの大オルガンを弾きこなすには相当の時間が必要だが、松居はさすがベテランのオルガニスト、楽器の特徴を把握するのは早いようで、ホール内にしっかり響くいい音を聴かせてくれた。


 バッハが楽しめた。音楽がよく流れていて、それが大きな一つの流れとなって全体的に大きな枠組みを作り上げていく、という演奏。

 こういう演奏は、ディテールを細かく表現してそれを積み重ねる演奏とは違って、割と大味な演奏になりがちだが、そこはさすがベテラン。全体を貫くオルガンの音色がとても聴きやすく、作品の宗教的なバックボーンをよく聴衆に伝えてくれたのではないか。

 レジストレーションの選択が良く、柔らかく、流麗で作品にふさわしい響きがしていたと思う。特に最初の2曲、BWV733662がとても聴きやすい、いい演奏だった。 

 パッサカリアは,ペダルがややもたつき気味であったにせよ、音楽が途切れることなく,次々と変奏される多彩な表情が現れ、バッハの壮年期の力強さを感じさせた演奏。


 シューマンは,これも色々なオルガニストが好んで取り上げる作品だが、しなやかで、シューマンらしいロマンティックな感性がよく反映されていた。


 冒頭のブクステフーデは,演奏者も緊張していたのか、やや硬めの演奏だったが、それでもベテランらしく楽器をよく響かせていたのは、さすが。


 最近のKitaraのオルガンは安定しているようだ。今日もとてもいい音がしていた。もちろんオルガニストの力量もあるが、管理状況がいいようだ。このままの状態が継続するよう期待している。


 雪まつりの時期に毎年開催しているこのウィンターコンサートだが、この日もほぼ満席。オルガンコンサートで、これほど多くの来場者がいるのは、全国的にもおそらくKitaraだけだろう。

 老若男女、様々な年齢層の来場者で賑わい、オルガンの音色を楽しんでいた。

2023/02/12

 札幌交響楽団 東京公演2023

20232 919:00  サントリーホール


指揮 /マティアス・バーメルト

フルート /カール=ハインツ・シュッツ

ハープ /吉野 直子


武満 徹:雨ぞふる

モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲

シューベルト:交響曲「ザ・グレイト」


 プログラムは全て札幌で開催された2月4・5日の第650回定期公演と同じ。

 今回聴いたサントリーホールでの席は、2階C席9列のやや上手より。2階席では、Kitaraのようにふくよかに響きが広がるのではなく、比較的ステージ上で響いている音がまとまって、余計な残響を加えることなく、ほぼストレートに伝わってくる。

 ホールの響きが演奏をより豊かにしてくれることはなく、ステージ上で起こっていることを、ほぼそのまま伝えてくれる。つまり、ステージに立つ演奏者の実力がそのまま伝わってくるシビアなホールとも言える。かと言って、残響が少ないわけではなく、適度でバランスの良い残響で、これは改装後、前よりも良くなった気がする。

 ここのホールが世界のトップアーティスト達を魅了し続けた理由の一つはここにあるのかもしれない。


 さて、以上のような印象を受けた今回の演奏について。

 武満は今回の方が、全体的により緻密。アンサンブルの精度は高く、響きがより磨き上げられ、この作品に秘められた武満の豊かな感性と世界観が見事に表現されていたと思う。


 モーツァルトは、両ソリストの鋭い感性や、歯切れのよいリズム感がより明確に伝わってきて、特にフルートのシュッツが思いがけずアクティブな演奏を聴かせ、これは存分に楽しめた。個人的には札幌での落ち着いた、気品のある演奏の方が好きだったが。

 バーメルトの指揮も活気があり、ソリストとの一体感がより強く感じられた演奏だった。

 ソリストアンコールに2人で、イベール/間奏曲。札幌では寡黙だったシュッツが、日本語で演奏作品を紹介。


 シューベルトはこの作品のスケールの大きさが存分に伝わってきた名演。全体的に響きが引き締まっており、特に後半の2つの楽章では、隙なく前に進んでいく活力と、充実した底力のある響きがとても心地よかった。バーメルトも元気いっぱいで、輪郭がよりはっきり聴こえてきて、推進力のある押しの強い演奏だった。

 ここのホールは、管楽器がよりはっきり聴こえ、Kitaraだと響きに溶け込まれて聴こえてこない、些細なミスまでクリアに聴こえてきたり、と中々シビアだ。

 第2楽章ではオーボエが大活躍だったが、この楽章終了後、2階席C7列下手寄り付近の席から、大声をだして拍手をする迷惑な輩がおり、せっかくの素晴らしい演奏の後の余韻が台無しに。

 アンコールにシューベルト/「ロザムンデ」バレエ音楽1番より。


 来場者が札幌より多く、客席は全体的に程よく埋まっていたようだ。終演後の聴衆同士の会話を盗み聞くと、素晴らしいじゃない、うまいオケだな、という感想が幾つか。多くの来場者は満足して、寒い中帰路に着いたのではないだろうか。

 過去に何度か、札幌の定期公演と東京公演のセットを聴いたことがあるが、東京公演は演奏者がより張り切るのか、札幌よりアクティブな演奏のことが多い。

 2011年だったと思うが、この時の東京公演も演奏者がとても張り切っていて、名演を聴かせてくれた。ミクローシュ・ペレーニがソリストで、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第2番を演奏、札幌の時と全く変わらずに、というか彼はいつも変わらずに淡々と演奏するが、しかし熱い音楽を奏でていたのは、懐かしい思い出だ。



2023/02/11

 タンホイザー

20232817:00 新国立劇場オペラパレス


 揮/アレホ・ペレス

 出/ハンス=ペーター・レーマン

美術・衣裳/オラフ・ツォンベック

 明/立田雄士

 付/メメット・バルカン

再演演出/澤田康子

舞台監督/髙橋尚史


領主ヘルマン/妻屋秀和

タンホイザー/ステファン・グールド

ヴォルフラム/デイヴィッド・スタウト

ヴァルター/鈴木 

ビーテロルフ/青山 

ハインリヒ/今尾 

ラインマル/後藤春馬

エリーザベト/サビーナ・ツヴィラク

ヴェーヌス/エグレ・シドラウスカイテ

牧童/前川依子

4人の小姓/和田しほり/込山由貴子/花房英里子/長澤美希

合唱指揮/三澤洋史

 唱/新国立劇場合唱団

バレエ/東京シティ・バレエ団

管弦楽/東京交響楽団


 レーマンのプロジェクトは20071319年に引き続き4回目の再演。回とも指揮者は違い、今回はアレホ・ペレス。

 今日聴いた4階席2列目中央では、響きが全体的にまとまって、かなり豊かに聴こえてくる。しかもステージの全容がほぼ見渡すことができ、ワーグナーの醍醐味である力感のある雰囲気が伝わってきて、なかなか楽しめた公演だった。

 ちなみに、この4階席、もう少し上になると舞台の一部が視野から欠けるため、再演を見るには良いが、プレミエはちょっときつそうだ。


 ペレスの指揮はワーグナーというよりは、ロマンティックで、イタリアオペラを聴くような表現も多く、かなりソフトな語り口のワーグナーだ。一方で全体的に中庸過ぎて、やや停滞した印象を受けたのも事実で、硬派なワーグナーファンからは嫌われそうだ。


 歌手ではグールドのタンホイザーがさすがの出来。疲れを知らぬスケールの大きい、表現力豊かな歌で、圧巻だった。2015年からの新国立劇場リングにも全て出演しており、その時よりもさらにパワーは増しているような気がする。日本人からはなかなか聴くことのできないエネルギッシュで素晴らしい歌だ。

 ツヴィラクのエリーザベトは全体的にやや性格がはっきりしないところがあって、ちょっと残念。シドラウスカイテのヴェーヌスは、声量もあり、ドラマティックな表現力のある歌で、楽しめた。

 日本勢では妻屋の領主へルマンが役柄に相応しい堂々とした貫禄と奥深さを感じさせる名演でさすが。この人は善良な役柄がとても良く、悪役は似合わない。その他では牧童の前川が好演。


 合唱は迫力があって、輪郭がとてもはっきりしており、素晴らしかった。指揮は三澤。やはり彼の指揮だとかなりメリハリのある力強い面がよく表現されるようだ。

 バレエは新国立劇場ではなく、東京シティ・バレエ団。階から観ると、見事に揃った素晴らしいバレエだが、このような振り付けは、あまり日本人ダンサーには向いていないようだ。


 舞台はそれなりに豪華さがあって、時代を想定した雰囲気がよく出ていて良かった。歌合戦のシーンなど華やかさがあっていい。背広姿や、ジーンズ姿の男達がいないので、より想像力豊かに鑑賞できるのはやはり楽しい。観る機会の少ない者にとって、オペラはこうでなくては。


 オーケストラは東京交響楽団。序曲では管楽器の調子が今ひとつ乗り切らず、成り行きが心配ではあったが、大健闘していたのでは。ただ、エネルギーが常に全開で、本音を言えば、ワーグナーではもう少しゆとりのあるオーケストラで聴きたかった。


 ところで、新国立劇場のHPで、「サロメ」の札幌公演(札幌文化芸術劇場、2023年6月11・13日)が決定したとのお知らせが発表になっていた。札幌でも新国立劇場のプロジェクトの上演機会が増えるのはいいことだ。楽しみにしておこう。

2023/02/06


札幌交響楽団 650回定期演奏会

20232 513:00  札幌コンサートホール Kitara大ホール


指揮 / マティアス・バーメルト

フルート /カール=ハインツ・シュッツ

ハープ /吉野 直子


武満 雨ぞふる

モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲

シューベルト:交響曲「ザ・グレイト」


 バーメルトと武満とは交流があったそう
だ。1982年の作品なので、武満の短い生涯からすると、後期に属するのかもしれない。

 武満らしい静かで瞑想的な雰囲気の作品だ

、どこか世界全体を見渡した普遍性のようなものが感じられた演奏で、彼らしい強い個性が隠れてしまっていたようにも思われたが、それが武満のこの作品に込めた意図だったのかもしれない。澄んだ、とてもいい響きが印象的で、これは、武満の思い描いた通りの響きだったような気がする。


 モーツァルトは、ソリスト2人に対して、もうこれ以上望むことはない、と思わせた名演で、今回の定期を聴いた聴衆は、幸運で贅沢な思いが出来たとも言える。

 フルートのシュッツは、余計なヴィブラートがなく、力が抜けて、笛そのものの自然で透明な、実に美しい音色がすっきりと聴こえてきて、しかもその表現には作為的なところが全くない。これは他の誰からも聴くことのできない素晴らしいソロだった。ピッチもとてもきれい。

 吉野のハープは安定感があり、楽器の魅力である華やかさと繊細さが行き交う微妙なニュアンスが素敵で、しかも響きがフワッと虹のように全体的に広がり、オーケストラと調和していくところはさすがだ。

 当然のことながら、2人の息のあったアンサンブルは申し分ない。よく演奏される作品だが、これだけソリストが2人とも音楽的に、鮮やかに揃った演奏は初めてだ。特に第2楽章が出色の出来だった。

 バーメルトの指揮は柔らかく、まろやかにオーケストラをまとめており、この響き、音色は彼ならではのもの。ソリストとオーケストラはいつもより多少奥のポジションだったが、響きにまとまりがあり、いい音がしていた。個人的には好きなポジションだ。

 ソリストアンコールに2人でイベールの間奏曲。


 後半のシューベルトは、程良いテンポと落ち着いた表現、管楽器と弦楽器が融和して一体となった、充実した響きが実に心地良く、骨格をしっかりと示し全体をまとめ上げて、この交響曲の本来あるべき姿を聴かせてくれた名演。

 ロマンティック過ぎずに、中庸の表情での演奏で、時としてやや無骨なところや、もう少し歌い込んだ陰影のある表情も聴きたい、と思ったところもあったが、曖昧さが一切なく、極めてクリアに全体像を描いており、シューベルトがこの交響曲に込めた思いを見事に示してくれた。

 余計な演出がない分、楽想の繰り返しが多い作品そのものの長さが気にはなったが、なかなかこのような重心の低い安定した演奏に触れる機会は少ないだろう。同じプログラムで東京公演を予定(9日19:00、サントリーホール)。


 定期では珍しくアンコールにシューベルトの「ロザムンデ」バレエ音楽1番より。

 コンサートマスターは会田莉凡。


 今日は武満の後に大きなステージ転換が行われたが、いつも登場していたステージ・マネージャーの田中正樹氏が2月日に永眠された。

 誠実で緻密な仕事ぶりと、演奏家や周囲の人々に対する細かい気配りは素晴らしかった。いつもダンディで、笑顔を絶やさず周囲を和ませてくれた。今日のモーツァルトの第2楽章を聴きながら、彼の素敵な笑顔を思い出していた。ご冥福をお祈りします。

2023/01/30

ひろがる!つたわる!オルガンのひびき

なぞなぞパイプオルガン


2023128 14:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


オルガン・お話/石丸 由佳

    (新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ専属オルガニスト)


J.S.バッハ:幻想曲 ハ長調 BWV570

H.マリル:カリヨン
モーツァルト:フランスの歌「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲
        ハ長調 K.265(きらきら星変奏曲)より抜粋
J.
シュトラウスI世:ラデツキー行進曲
伊福部 昭/和田 薫編曲:SF交響ファンタジー 1番 



 子ども向けのお話付オルガンレクチャーコンサート。ロビーは子供連れの家族で賑わい、いい雰囲気だ。
 細部までとてもよく丁寧に作られた良心的なプログラム。
 ステージ上奥に配置したスクリーンに、大オルガンの演奏の様子はもちろん、曲目、お話の内容などが上映される。
 同じくステージ上手側には、テーブル上にオルガンの仕組みがわかる、ふいご付きミニ卓上オルガンとオルガンのパイプの模型が、下手側にはポジティフ・オルガンも設置され、これらを全て使って石丸が説明をしていく。 

 最初にバッハを演奏。重量感のあるレジストレーションで、オルガン全体を良く響かせた冒頭にふさわしい力強い演奏だ。

 終了後、ステージに降りて来て、説明に入るが、移動時もスクリーンにはオルガン内部の様子を撮影したビデオが放映され、無駄な時間が一切ない構成。

 説明は台本を見ながら、話し方は朴訥でゆっくりと程良いテンポで親切丁寧。合間に入る実演は、お話の内容が確実にわかるように、時間をかけた、かつ良質の演奏だ。ステージ上の説明がほぼ30分とちょっと長めとも思ったが、場内の子供達は飽きずに聞いていたので問題なかったのだろう。


 再び、ステージ上から大オルガン演奏台に戻っての演奏。この移動時に、オルガン席までのバックヤードの移動風景が、あらかじめ収録済の映像で上演され、聴衆を飽きさせない工夫がされていて、これは感心。

 「カリヨン」の演奏に引き続き、「きらきら星変奏曲」では、ストップの選択と実際の様々なパイプの音色を、変奏ごとに換えて実演しながら説明。

 4段鍵盤とペダル全てを使用しての演奏で、多彩なパイプの音色とそれぞれの鍵盤上での違いを表現し、これは曲目の選択がよく、とてもわかりやすかった。

「ラデツキー行進曲」は,拍手の指揮者役でステージ上にホールスタッフ2名が登場。

 最後の「SF交響ファンタジー 」では、オムニパス風の作品ゆえ、今どの場面を演奏中、というメッセージが映画のワンシーンショットと共に投影され、これは気の利いた演出だった。終演が予定より10分程度オーバーしたが、場内は子供連れが多いにもかかわらず、皆大人しく鑑賞しており、これは内容が良かったためだろう。年配の夫婦連れも多く、子供だけではなく、大人も楽しめた内容だった。

 ただ、最後の伊福部の作品は、ゴジラと同時代に生まれ育った団塊の世代前後には楽しめた内容だが、子供達にはどうだったのか、ちょっと不安。作品としてはもっと思い切った現代音楽の方が、例えば先日のニューイヤーコンサートで演奏された藤倉大の作品のように、反復の多い、リズミックでゲーム音楽的感覚の作品の方がより面白かったかも知れない。



2023/01/16

 Kitaraのニューイヤー2023

2023114 15:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮/鈴木 優人

箏/LEO

管弦楽/札幌交響楽団


ヨハン・シュトラウスII:喜歌劇「こうもり」序曲

            ピツィカート・ポルカ(管楽器付き初版)

            ポルカ「雷鳴と稲妻」作品324

藤倉 大:箏協奏曲(管弦楽版)

ヴィヴァルディ:「四季」より 

ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調作品27より

       第3楽章 アダージョ

ヨハン・シュトラウスII:ポルカ「春の声」作品410

                ワルツ「美しく青きドナウ」作品314 


 鈴木優人は初めてのKitaraニューイヤー登場。彼の父君、鈴木雅明が2013年1月12日のKitaraニューイヤーを指揮しており、親子でKitaraの指揮台に登壇するのは、マズア父子(父クルト:フランス国立管弦楽団2004年4月22 、息子ケン=デイヴィト:PMFオーケストラ2022年7月22日)以来2例目。


 藤倉大の箏協奏曲が楽しめた。初演は2021年4月、コロナ禍のため無観客で今日と同じ指揮者とソリストで、読売日本交響楽団の演奏で行われている。

 公式YouTube で全曲鑑賞でき、しかも他のサイトでは、公式かどうかは不明だが、スコア(管弦楽版)まで掲載されており、鑑賞の手引きとしては完璧だ。


 基本的に、箏ソロパートは、増音程と減音程で性格づけられた幾つかのリズムパターンを、組み合わせを変えながらオスティナート風に繰り返され、所々で、自由で拍子感を感じさせないソロカデンツァが挿入される。オーケストラは和楽器を模倣した音色、響きを再現し、ソロと一体となって音楽を形成していく。  


 藤倉は和楽器のためのソロ作品を幾つも書いていて、和楽器の奏法とイメージ、音色については熟知しているようだ。この作品は、西欧のスタイルで作曲されてはいるが、根本には、やはり和のテイストが強く盛り込まれている。

 作品は、映画に例えると、モノクロのシーンとカラーのシーンが交代で登場し、しかもカラーのシーンは時としてどぎつい原色だったり、美しい風景を描いた水彩画風だったり、と色彩豊かだ。

 藤倉ならではのアクティブで、常に前向きで肯定的な姿勢が感じられる作風で、鑑賞後はある種の爽快感、満足感を与えてくれる彼ならではの特質を持った作品である。


 箏のLEOは、札幌初登場。卓越したテクニック、特に「ゆりいろ」、「ちらし」などこの楽器独特の技法(スコアを見て,初めて知った)で表現される微妙な色合の音色が素晴らしく、また、繰り返し音型は無機質にならずに、楽器本来の響きの美しさ、芯のある力強さをいつも感じさせてくれた魅力的な演奏だった。

 現代における箏の魅力、和楽器の存在の意味と限りない可能性を存分に伝えてくれ、ニューイヤーコンサートにふさわしい、しかもここでしか聴けない名演だった。


 アンコールは鈴木優人のチェンバロと一緒に「新春によせて」というタイトルの数分の短い即興演奏。ここでは鈴木がLEOの即興を見事にサポートし、しかもチェンバロの機能を効果的に活用した素敵な演奏だった。


 後半のラフマニノフが良かった。編成が12型だったにも関わらず、豊かな響きを導き出し、その中から管楽器群のきれいなソロがふわっと浮かび上がってきて、かつ過度にロマンティックになり過ぎず、この指揮者ならではの感性が光ったバランス感覚の良い演奏だった。


 ヴィヴァルディの四季から「春」は、今日のコンサートマスター、会田莉凡がソロ。柔軟でこなれた、よく歌い込まれた演奏で、これは機会があれば、是非全曲が聴きたくなる抜群のセンスの良さを披露してくれた。


 その他に定番メニューのJ.シュトラウス2世の作品が前半と後半で、全部で5曲。曲目が連続しないように、よく考えられた配置だ。取り立てて個性的ではないが、定番メニューを滞りなく上手にまとめ、作品の性格、魅力を過不足なくそのまま伝えてくれた好演。

 アンコールにラデツキー行進曲。


 ステージ上や、ロビーにはニューイヤーコンサートにふさわしい装飾が施され、多くの来場者で賑わい、いい雰囲気だった。