2024/07/23

 PMFホストシティ・オーケストラ演奏会


2024年7月21日 14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮/ウィルソン・ウン
ホルン/アンドリュー・ベイン(PMFアメリカ)
管弦楽/札幌交響楽団(PMFホストシティ・オーケストラ)、

    PMFオーケストラ・メンバー


細川 俊夫:ホルン協奏曲「開花の時」
チャイコフスキー:交響曲 第6番「悲愴」



 細川俊夫の作品が興味深い演奏だった。
当日配布のプログラム解説によると、ベルリン・フィルのために書かれた作品で、蓮の花がゆっくりと咲いていく様子を表現している。
    ステージ上のオーケストラに加え、トランペットとトロンボーン各1人が客席の2階下手と上手に配置され、会場全体が一つの蓮の池のような音響効果になるよう書かれている。同楽団の本拠地はKitara同様ワインヤード形式のホールで、この作品を選択した理由の1つはそのような関連からだろう。

 

    今日のホルン奏者、アンドリュー・ベインは

線が太めの明るい音色で、強弱の繊細な表現の幅がよくコントロールされており、安定した表情で好演。

 オーケストラでは、客席からはよく見えなかったが、おそらく打楽器には「りん」のような仏具が楽器として使用されていたように思える。それらが奏でる繊細で透明な響きが全体を占めていて、指揮者のウンはいわば東洋的、日本的な繊細さで全体をよくまとめ上げていたようだ。

 ただ、ホール全体が蓮の池のような一つの響きに聞こえてくるためには、ステージ上と客席に配置された楽器群の音量バランスが違いすぎるようで、思ったほどの効果的な響きは感じなかった。これは細川の書法と、ホールの違いによるものだろうが、ただしやはり実演で聴くと、当然だが、録音で聴くよりもはるかに魅力的な作品だ。是非、札響で再演を期待したい。


 チャイコフスキーは、PMFの学生14名と、PMF期間後半から参加するPMFアメリカの教授陣7名が加わっての演奏で、管楽器のソロのほとんどは教授陣が担当。これらはもちろん素晴らしいが、不思議なものでいつもの札響とは音色、全体的な響きが変わり、違うオーケストラを聴いているようだった。

 ウンの指揮は、深く歌い込んだり、自分のペースでオーケストラを強引にドライヴすることもなく、比較的表現が淡白。濃いロマンティシズムなどはあまり感じられず、それよりもオーケストラ自体の自主的表現能力を引き出し、それに委ねるところがあるようだ。

 作為的なところがなく、全体的にやや物足りなさがあったにせよ、作品そのものの姿を明確にダイレクトに伝えてくれるので、とてもわかりやすい演奏だったと言える。

 ただこの指揮者ならではの個性は感じられず、札響から圧倒的パワーを導き出した他に、どのようにこの作品を演奏したいのか今ひとつ伝わってこなかったのが惜しい。ゲストプレイヤーが加わっての交流演奏会で、それなりに演奏者側は楽しそうだが、音楽的密度がやや薄く聴く側としては物足りなさを感じた。


 アンコールに弦楽器だけで、パーセル=ストコフスキー編曲のダイドーのラメント「わたしが地中に横たえられた時」。これも流れに身を任せているようで自然できれいだったが、そもそもが個性的な編曲なのだから、もっと表情豊かに演奏してくれた方が楽しかった。

 コンサートマスターは田島高宏。

2024/07/16

 PMFオーケストラ演奏会


2024年7月14日14:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮/エリアス・グランディ
ヴァイオリン/クララ=ジュミ・カン*
PMFヨーロッパ(PMFウィーン/PMFベルリン)
PMFオーケストラ


R. シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」 作品20
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品19*
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

 冒頭の「ドン・ファン」は10日のオープニング・ナイトでお披露目済み。

コンサートマスターは前回はライナー・キュッヒルだったが、今日はアカデミー生。スケールの大きな枠組みの中で繰り広げられる繊細かつ情熱ある伸びやかな演奏は、前回同様でこれは期待通りの仕上がり。

 

 プロコフィエフのソリスト、クララ=ジュミ・カンは札幌は2回目のようだ。初回は2018年10月の札幌交響楽団第613回定期演奏会で、小泉和裕の指揮でブルッフのヴァイオリン協奏曲 第1番 を演奏している。この定期は残念ながら聴いていない。

 今日の演奏は、やや硬質の音色ながらも、プロコフィエフの野生的な逞しさを感じさせるベテランらしい演奏。どちらかというと、落ち着いた雰囲気の持ち主のようで、アカデミー生と共演するのであれば、オーケストラをぐいぐい牽引し、丁々発止と競演するようなソリストの方が刺激があっていいのではないだろうか。


 ドビュッシーは素敵なフルートソロと、けだるい暑い夏の日の一日を想起させるオーケストラのよくまとまった表情が印象的な良質の仕上がり。ただ、全体的にやや大味で、各パートがもっとお互い聴き合うような緊張感と繊細さがあるともっと充実した演奏になったのだろう。だが、これは常設のオーケストラでもなかなか難しい課題で、いい演奏に触れる機会はそう多くない。従ってアカデミー生大健闘の演奏だったとも言えるだろう。


 ストラヴィンスキーは、ウィーン・フィルとベルリン・フィルの来札メンバーが全員加わっての編成。コンサートマスターはライナー・キュッヒル。

 ホルンを除いて、主要なソロは首席に陣取った教授陣が演奏。トッププレイヤーが勢揃いし、札幌以外では聴けない贅沢なオールスターによる編成だ。

 従ってソロが上手なのは当然で、結果的にオーケストラ自体もとてもよく弾けていて細部の表情、全体的なスケール感など申し分ない仕上がり。

 毎年のことだが、PMF前半を担当したウィーンとベルリンの教授陣はこれで帰国予定なのか、そのサヨナラ公演の意味もあるのだろう。

 一方で、この作品で聴かせてくれたアカデミー生のホルンのソロが、柔らかい音色で、とても音楽的で素敵な演奏。それゆえ、教授陣の見事なソロも聞き応えがあるが、せっかくの機会なので、全てとは言わないが、アカデミー生にソロを演奏させる機会をもっと提供してもいいのでは。それを楽しみにしている聴衆も多いのではないだろうか。

「火の鳥」のソロを吹ける機会はそうそうあるものでも無いし、かつソロを中心にしてオーケストラの表情、バランス、全体の響きをどう組み立てていくかなど、取り組むべきオーケストラスタディの課題があるような気がする。

 このような背景があるにせよ、グランディの指揮はやはり優れた統率力があり、過去PMF期間前半に登場した歴代客演指揮者の中でも、トップクラスの才能の持ち主だ。今後、札響でどのような活躍を見せてくれるか、楽しみにしよう。

2024/07/13

 PMFウィーン演奏会


2024年7月12日19:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


PMFウィーン(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー)
ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン I)*
ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン II)
ハインツ・コル(ヴィオラ)**
ペーテル・ソモダリ(チェロ)
ミヒャエル・ブラーデラー(コントラバス)
 

PMFオーケストラ・メンバー(ブルッフのみ)
   エリカ・ハバード (ヴァイオリン Ⅲ)
   金山依理 (ヴァイオリン Ⅳ)
   グレイシー・マックフォールズ (ヴィオラ Ⅱ) 


* 前ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター
** 前ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団奏者



ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第15番 変ホ短調 作品144
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品13
ブルッフ:弦楽八重奏曲 変ロ長調(遺作)

 

 とても聞き応えのある演奏だった。室内楽としての音楽的な完成度の高さはやはり比類無きもので、音色の統一、音程の取り方、ハーモニーの作り方、アンサンブルの確実さなど、世界トップクラスのオーケストラで演奏してきた、あるいは演奏している奏者達の奥行きの深さを感じさせた。

 その点で、ショスタコーヴィッチは、彼らの長年の豊富な演奏活動が見事に反映された秀演。個々のメンバーの技術的な高さはもちろんだが、それ以上に室内楽に対する鋭敏な感性で見事にまとめ上げらた、しかもこのアンサンブルでなければ聴くことのできない独特の美しさを持つ演奏は実に魅力的だった。

 この作曲家が持つ重苦しい時代背景や国籍を強く感じさせない、むしろ音楽的な美しさを追求した美的感覚に優れた演奏だったと言えよう。

 晩年のショスタコーヴィッチがこの作品で表現したかった想いは、様々な形に姿を変え、聴衆の一人一人に訴えかけてきたのではないだろうか。


 メンデルスゾーンとブルッフはこのアンサンブルの本領発揮というところか。メンデルスゾーンは若き作曲家の颯爽とした瑞々しい感性が見事に表現されており、キュッヒルが大活躍。まだまだ若い感性を失っていないようだ。


 珍しいブルッフの八重奏はアカデミー生が加わっての演奏。これはブルッフ晩年の作曲にも関わらず、豊かで明るい感覚に満ちた作品だ。快活で、生命力溢れる歌心に満ちた演奏で、特にこの演奏だけに加わったコントラバスのミヒャエル・ブラーデラーが大活躍。低弦はかなり密集された書法のようで、チェロのペーテル・ソモダリと共にアンサンブルを支えるだけではなく、ソリスティックにも見事な演奏を聴かせてくれた。

 アンサンブルリーダーとしてのキュッヒルがさすがの貫禄で、全体をよく統括。来たるPMFオーケストラ演奏会で、コンサートマスターとして加わるようだが、そこでの活躍も期待しよう。

 

2024/07/12

 PMFベルリン演奏会


2024年7月11日19:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


PMFベルリン(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団メンバー) 
アンドレアス・ブラウ(フルート)*
ジョナサン・ケリー(オーボエ)
アレクサンダー・バーダー(クラリネット)
シュテファン・シュヴァイゲルト(ファゴット)
サラ・ウィリス(ホルン)
タマーシュ・ヴェレンツェイ(トランペット)
イェスパー・ブスク・ソレンセン(トロンボーン)
フランツ・シンドルベック(パーカッション)

佐久間晃子(ピアノ)

* 前ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席奏者


ダンツィ:木管五重奏曲 ト短調 作品56
パーシケッティ:空ろな人間たち 作品25 [トランペット、ピアノ]
シューマン(ソレンセン編):ロマンス 作品28から第2曲 

              [トロンボーン、ピアノ]
タファネル:木管五重奏曲 ト短調 
 
ラヴェル(M. ジョーンズ編):クープランの墓 [木管五重奏]

                PréludeMenuetRigaudon
プレヴィン:ヴォカリーズ [トランペット、トロンボーン、ピアノ]
ドヴォルザーク(シェーファー編):スラヴ舞曲集から [木管五重奏]
                 作品72-2 ホ短調、作品46-8 ト短調



 ベルリンフィルの管楽器メンバーによる木管五重奏とそれにトランペット、トロンボーン、パーカッションが加わっての演奏会。ファゴットとオーボエ奏者以外は昨年に引き続きの来札(昨年は7月14日に開催)。

 今日は一番年配のフルートのアンドレアス・ブラウが素晴らしかった。美しい張りのある音色と優れたテクニックでアンサンブルをリードし、存在感抜群。


 前半は木管五重奏の定番ダンティとタファネルの間に、トランペットとトロンボーンのソロを挟むプログラム。

 木管五重奏ではややラフに流れるところもあったにせよ、特にタファネルの流麗な演奏が見事。各楽器のバランスは思慮深く考え抜いてはいるが、ごく自然にコントロールできていて音楽が澱みなく進行していく、という名手達ならではの快演。中でもオーボエのジョナサン・ケリーが生き生きとした表情で、また低音をなめらかな音色で支えリードしたファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの、共に今年初登場の2人が好演。


 トランペットのヴェレンツェイが演奏したパーシケッティはアメリカ現代の作曲家。ちょっと暗い影のある雰囲気の作品を、柔らかくすっと抜ける伸びやかな音色で演奏。昨年も確か同国のローブの作品を取り上げており、彼はアメリカ近現代の作品が好みなのかもしれない。


 トロンボーンのソレンセンは今年はシューマンのロマンス。昨年もシューマン(歌曲集「詩人の恋」から)の編曲を演奏しており、シューマンが好みのようだ。

 オリジナルはピアノ曲だが、いかにもシューマンらしいロマンティックな旋律がピアニッシモにこだわり過ぎて作品の良さを伝えきれなかったようだ。それにしても、この弱音でのコントロールは実に見事。


 後半、ラヴェルの「クープランの墓」からの3曲は、五重奏の一人ずつの活躍の場があり、また何よりも作品と編曲がしっかりとしていて、聞き応えがあった。おそらくオーケストラ版で何度も演奏しているのだろうが、この作品に限らず、彼らの演奏は手慣れたルーチンワークであっても、常に新鮮さが感じられるのが魅力だ。


 プレヴィンのヴォカリーズは初めて聴く作品。オーケストラでは華やかな場面で活躍する楽器が、弱音器をつけほとんどピアニッシモで静かに瞑想するように歌い続けていく5分程度の作品で、これはおそらくかなりのコントロール力がなければ演奏できない作品だろう。トランペットのヴェレンツェイ、トロンボーンのソレンセンともに昨年に引き続きの来札だが、普段演奏する機会の少ない作品を取り上げるのが恒例のようで、それを楽しんでいるかのように思える。見事な演奏だった。


 最後のドヴォルザークは10日のオープニング・ナイトでも披露していたが、今日はパーカッションが加わっての演奏。10日はぶっつけ本番のような雰囲気があったが、今日は全体的に音色も潤っていて、仕上がりは万全。フィナーレに相応しい名演だった。


 配布プログラムは本日の演奏曲目一覧のみのシンプルなもの。おそらく直前までプログラムが決定しなかったのだろうが、パーシケッティ、プレヴィンは簡単な解説が欲しかった。

2024/07/11

 PMF2024 オープニング・ナイト 

2024年7月10日18:30  札幌コンサートホールKitara大ホール


バーンスタイン:「キャンディード」序曲
 エリアス・グランディ(指揮)
 PMFベルリン
 PMFオーケストラ
 
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品13 から
 
I. Adagio  Allegro vivace
 PMFウィーン
  ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン I)
  ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン II)
  ハインツ・コル(ヴィオラ)
  ペーテル・ソモダリ(チェロ)
 
ドヴォルザーク(シェーファー編):スラヴ舞曲集から
 作品72-2 ホ短調
 作品46-8 ト短調
 PMFベルリン
  アンドレアス・ブラウ(フルート)
  ジョナサン・ケリー(オーボエ)
  アレクサンダー・バーダー(クラリネット)
  シュテファン・シュヴァイゲルト(ファゴット)
  サラ・ウィリス(ホルン)
 
R. シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」作品20
 エリアス・グランディ(指揮)
 PMFウィーン
 PMFオーケストラ



エリアス・グランディ ©Shervin Lainez
 今年の注目は指揮のエリアス・グランディ。
来年から札幌交響楽団の首席指揮者に就任予定ということもあって期待がより高まる。

 冒頭のバーンスタインは、歯切れが良く早めのテンポで颯爽と、一気呵成にまとめ上げた快演。鮮やかな指揮ぶりで聴衆を沸かせた。

 オーケストラは生き生きとかつ伸びやかに演奏しており、おそらくアカデミー生はとても気持ち良く演奏でき、満足しているのではないだろうか。

 オーケストラとして練習を始めてまだ1週間にも満たないはずだが、若者の積極性と途方もないエネルギーを引き出し、この作品の魅力を見事に表現してくれた。この音楽祭の開幕にふさわしい抜群の仕上がりだった。


 最後のR. シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」では、作品が持つ逞しいエネルギーと、一方で木管楽器のソロからは繊細で多彩な表情を引き出すなど、まるでオペラの一場面を観るような豊かな色彩感を創出。加えて弦楽器群の豊かでまろやかな表情、全体的に充実した響きと見事なテンポ感で、この作品のストーリー性を余すところなく伝えてくれた。オペラ指揮の豊かな経験が生かされた演奏だ。

 結成したばかりのオーケストラとは思えない充実した演奏で、まだ学生とはいえ、高い演奏能力を持つアカデミー生達のオーケストラを短期間でまとめ上げたグランディの才能に感心。

「ドン・ファン」ではライナー・キュッヒルがコンサートマスター。さすがにソロでは年齢を感じさせ、若者のエネルギーに負けそうなところもあったが熱演。


  グランディを聴くのは今回が3回目だが(初回はオペラ「カルメン」、2020年1月札幌文化芸術劇場、2回目は第649回札幌交響楽団定期演奏会、22年11月27日札幌コンサートホールKitara)、今日は今までとは違うレパートリーで好演を聴かせてくれ、以前よりその実力が向上しているようだ。

 来たる13日(苫小牧)、14日(札幌コンサートホール)のPMFオーケストラ演奏会が大いに楽しみだ。さらに今年は札響第665定期(11月30、12月1日)にも登場予定、今後の活躍が多いに期待される。

 これらのコンサートを聴いてみなければ明確にはわからないが、グランディは、ここ数年PMFに登場した指揮者の中では抜群の才能の持ち主のような気がする。


 今日はそのほかに、ウィーンフィルの弦楽器メンバーによるメンデルスゾーンとベルリンフィル管楽器メンバーによるドヴォルザーク。ともに名手達による卓越した演奏で、11日(ベルリン)、12日(ウィーン)に予定されているそれぞれのコンサート(ともに19:00、札幌コンサートホール大ホール)の予告編。さりげなく演奏しているようだが、やはり音楽性豊かな演奏。こちらも当日の演奏が楽しみだ。

2024/07/09

 Kitaraのバースデイ


まずはここから公演

2024年7月6日11:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


オルガン/吉村 怜子
司会/北川 久仁子
ピアノ(ゲスト)/ウィリアム・フィールディング

        (第24代札幌コンサートホール専属オルガニスト)


ヘンデル:水上の音楽より 第2曲 ホーンパイプ
サン=サーンス:動物の謝肉祭より 第7番 水族館
近藤 岳:「きらきら星」の主題による変奏曲
チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」組曲 作品71aより

            第8曲 花のワルツ(オルガン&ピアノ)


もっとじっくり公演

2024年7月6日 14:00 札幌コンサートホールKitara大ホール


オルガン/ウィリアム・フィールディング

     (第24代札幌コンサートホール専属オルガニスト)


J.S.バッハ/イゾワール編曲:カンタータ 「神よ、われら汝に感謝す」BWV29

                より シンフォニア
フォーレ:ドリー組曲 作品56より 

     第1曲 子守歌、第2曲 ミ・ア・ウ、第6曲 スペインの踊り
ヴィドール:オルガン交響曲 第5番 ヘ短調 作品42-1より 

      第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
ボエルマン:ゴシック風組曲 作品25より 第3曲 聖母への祈り
デュリュフレ:アランの名による前奏曲とフーガ 作品7



 今年のKitaraのバースデイはオルガンコンサート。二本立てで、前半は0歳児から入場可能のいわゆる入門編、後半が本格的コンサートで、共に約45分のプログラムというコンパクトな内容。

 前半はお話し付きで、オルガンは札幌コンサートホールのオルガンスクール出身者、吉村怜子。東京芸大とリヨン国立高等音楽院でオルガンを学び、卒業後は札幌を中心に演奏活動を行っている。この欄でも出演したコンサートをいくつか紹介している(代表的なコンサートでは、2022年1月22日 「オルガンミュージアムへようこそ」)。

 ホール内は幼児の泣き声などでオルガンの音が充分聴こえてこなかったものの、演奏は音色がきれいで、作品の姿をきちんと伝えてくれる考え抜かれた冷静な演奏だ。今まで数多く聴いてきたこの世代の日本人オルガニストの中では、より優れた安定感とセンスの良さを誇る。地道に安定した演奏活動を行っており、今後により一層期待しよう。

 ヘンデル、サン=サーンスは落ち着いた雰囲気があって好演。近藤の変奏曲はそれぞれの変奏ごとの性格を司会者が紹介しながらの演奏。子供だけではなく、大人にもわかりやすく、これは面白かった。

 最後のチャイコフスキーではフィールディングがピアノで共演するなど、多彩なプログラムで楽しめた。アンコールは2人のオルガン連弾で、エルガーの威風堂々。

 全体的によく設計された良質のプログラムだった。


 

 後半のフィールディングは、今日はフランスの作曲家を中心に、色彩感ある演奏を聴かせてくれた。

 冒頭のイゾワール編曲のバッハは、いつものフィールディングならもう少し快活に演奏するのだろうが、今日は比較的落ち着いた演奏。オルガンの機能を活かし、音色の対比等で多声部に聴こえるように編曲しているが、演奏しにくい箇所があるのだろうか、まとめるのに多少苦労していたように聴こえた。

 その他ではフォーレが美しい音色で好演だったが、ボエルマンとデュリュフレがKitaraオルガンの魅力を存分に楽しませてくれた名演。これらの作品はやはりここのオルガンでなければ出せない洗練された音色があるようで、特にデュリュフレは、歴代専属オルガニストが何度も取り上げてきた名作だが、全体的な雰囲気のまとめ方では、とても見事な仕上がりだったとも言えよう。

 アンコールに「Happy Birthday to You」による即興演奏を披露。即興の基本はフランス近代の作曲技法に基づくもので、今日のプログラムにふさわしい統一感があって、センスの良さを示してくれた。

 オルガンの状態は良好。いい音色だった。

2024/07/02

 札幌交響楽団第662回定期演奏会


2024年6月30日13:00  札幌コンサートホールKitara大ホール


指揮:尾高忠明(札響名誉音楽監督)

ヴァイオリン:金川真弓


チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲

ドヴォルジャーク/交響曲第9番「新世界より」


 このたび、6月29・30日に札幌コンサートホールKitaraで開催する『第662回定期演奏会』の指揮者 シャルル・デュトワ氏が、体調不良により出演を見合わせることになりました。

 そのため指揮者を尾高忠明(札響名誉音楽監督)に変更して開催することといたします。

 シャルル・デュトワ氏と札響の共演を楽しみされていましたお客様には、誠に申し訳ございませんが、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。

 急な依頼をお引き受け下さった尾高氏に感謝いたしますとともに、デュトワ氏の一日も早い回復をお祈りいたします。(主催者発表)


 シャルル・デュトワが体調不良のため指揮者が尾高忠明に交代。

 ちなみにデュトワはPMF の芸術監督を2000-02年の3シーズン務め、02年にはマルタ・アルゲリッチが登場し、Kitaraで華やかな音楽シーンが繰り広げられたのは、記憶に鮮明に残っている。

 

   最近では新日本フィル第650回定期演奏会〈トリフォニーホールシリーズ〉 (2023年6月24日すみだトリフォニーホール大ホール)を聴くことができた。87歳とは思えないタフな演奏で、札響からどのような音楽を引き出すのか大いに楽しみだったが、次回の登場に期待しよう。 


   金川のチャイコフスキーが良かった。ホール中に朗々と響き渡る骨太の音色で、落ち着いた堂々とした語り口が印象的。前回(2023年3月5日第651回定期)、「プロコフィエフ /ヴァイオリン協奏曲第1番」を偶然にも尾高と共演したときと比べると、作品の雰囲気が違うため一概にはいえないにしても、演奏は一段とスケールが大きくなったように思える。

 ひとフレーズごとにしっかりと聴衆に語りかけてくる説得力のある演奏で、華麗な表現、静かな歌、オーケストラとの対話など申し分なく、巨匠の演奏を聴いているようで、実に見事。尾高はソリストと一体になって全体を引き締まった表現でまとめ上げ、この作品を堪能させてくれた。

 ソリスト・アンコールに「パガニーニの24の奇想曲」より第24番。音色がチャイコフスキーの骨太の音色から繊細な響きにガラリと変化したのには驚愕。各変奏の性格をきめ細やかに表現した素敵な演奏だった。このソリストの多彩な才能に魅了された前半だった。


 尾高・札響の「新世界交響曲」は、ここKitaraで何度も聴いてきたが、定期演奏会で聴くのは初めて。以前はもっと大柄な演奏だったように記憶しているが、今日は細部まで緻密に仕上げられた演奏だ。

 やはり定期での公演となると緊張感が全く違うようで、札響以外のオーケストラ含め、幾多も聴いてきた中でもこれだけ充実した響きのする「新世界より」は今までに聴いたことがない。

 札響に限って言えば、毎年のように何度も聴いたのは、尾高が常任指揮者だったもう20年近くも前の事で、オーケストラの表現力が当時とは比較にならないほど豊かになっているのもその原因の一つだろう。

 部分的にはもっと繊細で美しい表現であれば、と感じたところもあったにせよ、管楽器群の素晴らしいソロと全体的に豊穣な響きでまとめ上げられた演奏は、やはり格別だ。

 ただ、いつも聴き慣れた尾高の音楽で、もちろん安定感があって安心して聴くことができた卓越した演奏だったが、やはりデュトワだったらこの作品をどう表現するのか、聴いてみたかったのが正直な気持ちだ。ぜひ再登場を願う。

 コンサートマスターは会田莉凡。